アトミクラブ
RUNNER's 四字熟語 30


 RUNNER's四字熟語はKさんからの匿名寄稿で2006年5月から始まりました。
 寄稿は故事成語やことわざをランニングの面から解釈しアトミクラブ通信に彩りを添えようと事務局ZとK・Kさんが練習後の某中華屋さんで飲みながら企画を立てたのが始まりでした。
 早いもので連載は5年30回を超えました。
 RUNNER's四字熟語は毎号のアトミクラブ通信に花を添え、無味乾燥に陥りがちな会報を彩りよく飾ってくれています。
Kさん、いつもありがとうございます。
 ここでKさんにあらためて感謝するとともに、これまで取り上げてまいりました30タイトルの「四字熟語」たちに再登場してもらい、故事から学ぶランニング講座としてもう一度振り返ってみようとまとめました。
ぜひともそばにおいて何度でも読み返していただきたいと思います。
最初に通信に掲載された形をいくぶん削除したり書き加えたりしました。
そして構成もあいうえお順に直しました。
 なお、元の形でお読みになりたい方は当クラブのホームページのバックナンバーを開いてRUNNER's四字熟語コーナーをお読みになってください。
 感想などありましたら通信編集部 関田までお寄せください。


-------目次------   
暗中模索(あんちゅうもさく) 好事多魔(こうじ ま おおし)
以心伝心(いしんでんしん) 呉越同舟(ごえつどうしゅう)
一衣帯水(いちいたいすい) 七転八起(しちてんはっき)
一期一会(いちごいちえ) 四面楚歌(しめんそか)
一念発起(いちねんほっき) 深謀遠慮(しんぼうえんりょ)
一寸光陰(いっすんのこういん) 則天去私(そくてんきょし)
傍目八目(おかめはちもく) 大器晩成(たいきばんせい)
温故知新(おんこちしん) 他山之石(たざんのいし)
外柔内剛(がいじゅうないごう) 朝令暮改(ちょうれいぼかい)
臥薪嘗胆(がしんしょうたん) 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)
画竜点睛(がりょうてんせい) 粉骨砕身(ふんこつさいしん)
虚心坦懐(きょしんたんかい) 唯我独尊(ゆいがどくそん)
乾坤一擲(けんこんいってき) 臨機応変(りんきおうへん)
捲土重来(けんどじゅうらい) 和気藹々(わきあいあい)
光陰如矢(こういんやのごとし)以和為貴(わをもってとうとしとなす)

暗中模索(あんちゅうもさく)

RUNNER's四字熟語 その21  2009年9月 アトミ通信103号掲載

真っ暗がりの中で手探りに物を探すこと。
手がかりのない物事を見付け出すこと。
手探りで探査すること。
訳も分からず古人の言葉をやみくもに引用すること。
手がかりもないのに当てもなく捜すこと。

 さて、ランナーのあなた、
「ア+ミ」の由来を初めから知っているメンバーならいざ知らず、 多くのメンバーは初めてアトミクラブの練習に顔を出したときには正に暗中模索の気持ちだったのではないでしょうか。
アトミというと、速い若いランナーばかりの集団なのではないか、競技志向が強いランナーばかりではないのか、 織田フィールドの更衣室はどう使ったらいいのか、 シャワー設備は利用できるのか、 近くに銭湯はあるのか、 会の運営はどのようにされているのか、 メンバー登録はどうしたらいいのか、 練習内容はどうなっているのか、 練習開始時間前にアップは済ますのか、 スタートはどこからなのか、 クラス分けがあるようだが自分はどこで走ったらいいのか、 年会費などの徴収はあるのか、 レース出場に縛りはあるのか、 陸連登録はどうしているのか等、 まったくの手探り状態で参加されたことと思います。
実際には、競技志向でタイムを追うグループもあれば、 ファンランに近いけれど速くなりたい、 自己ベストを目指したいというランナーもいます。
往年の競技者で今は年齢に応じた走りを希むメンバーもいます。 健康維持を第一のランナーもいれば、国際資格を取るための練習を求めるランナーもいます。 みな、社会人として懸命に生きながら、共に走る仲間を求め、より質の高い練習を求めて織田に集まって来ています。
アトミクラブには、その時々の自分の状況に応じた練習が出来る環境が用意されています。 練習参加者がコンスタントに100名を超えるクラブだから可能になることです。 共通項は、自分が目指す目標に向かって、時に凌ぎ合い、時に支え合い、謙虚に気持ちよく走ろうとしている点です。
みな、働きながらもランニングに勤しもうと夜間照明の許に集まって来る仲間です。 男性はもちろん、女性ランナーも安全に安心して練習ができるクラブがアトミクラブです。 このような良い雰囲気は、手探りの中から、参加メンバーの一人ひとりが作り上げてきたアトミの宝です。
メンバーが相互に良好な練習環境と人間関係を構築してきたアトミクラブに、 パラリンピックのマラソン金メダリストがいたり、 デフリンピックのマラソン日本代表選手がいたりすることは嬉しいことです。 オリンピックのマラソンを日本代表として三度走ったランナーも顔を出して、暗中に光明のアドバイスをしてくださいます。 有り難いことです。 分け隔て無くお互いの努力・鍛錬を率直に認め合うアトミの空気を大切にしたいですね。

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以心伝心(いしんでんしん)

RUNNER's四字熟語 その5 2007年1月 アトミ通信87号掲載

言葉によらず、心で心に伝えること。
無言のうちに互いの胸の内を通じ合わすこと。
心が互いに良く通じ合うこと。
口で説明しなくても、気持ちが相手の心に通じること。

 さて、ランナーのあなた、 駅伝は格別。 「襷をつなぐのが責任」、「少しでも早く襷を」、「離されてなるものか」と懸命に走る気持ちが次の走者に伝わり、 チームとしての志気や成績に大きく関わってきます。まさに以心伝心が物言う、メンタルレースです。
 06年の奥むさし駅伝で面白かったのがアトミ三つ巴チームの攻防です。 第4中継点で、1チームが先行した後、残る2チームの番号が相次いで呼ばれました。 しかし、コースに出たHさんとSさんの目に映るアトミのランシャツ・ランパンはただ一人。 中継に迫ったところでやっと、Iさんの背中に張り付くKさんの顔が見えました。 右と左の首の傾きで顔が覗くだけの伯仲走です。襷渡しは1秒差。 襷を受けて逃げるHさん、追うSさん。3区の気持ちがそのまま4区の二人に伝わって、追う も必死、逃げるも必死。以心伝心のダブル・バトル・レース。 先行の1チームも含め4区・5区の走者6名の区間タイムの差は最大で13秒。 当然、アンカー勝負に縺れこみました。 駅伝の以心伝心の醍醐味ですね。走り終え、飯能に戻って顔を合わせるやいなや、 Hさんの挨拶は「Kさん、恨むからぁー」。
4人がお互いに精一杯の走りをしたことへの興奮・充実・満足・感激・祝福。
以心伝心には、単なる偶然ではない何かがあるようです。 見ず知らずであっても、マラソンの後半、並走するランナーと競争になって、抜きつ抜かれつしながらも、 頑張る相手と共感を覚えて走ったことはありませんか。 「負けませんよ」とか「ゴールまで一緒に」とか「頑張りましょう」とか、お互いに言葉は交わさなくても、 同じ気持ちでゴールを目指す。タイムも伴えば最高ですね。中には、同時ゴールのおまけまで付いて、 忘れられない出会いになったなんてこともあるのでは。

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一衣帯水(いちいたいすい)

RUNNER's四字熟語 その14  2008年7月 アトミ通信96号掲載

一筋の帯のように細い水の流れ。
細く狭い川や海峡そのもの。
狭く延びる海峡。
細く狭い川や海峡を挟んで近接・隣接していること

さて、ランナーのあなた、
あなたは、どんな目的でアトミクラブに参加しているのでしょうか?
また、どんな所にアトミの良さを感じ取っているのでしょうか?
アトミクラブには老も壮も若も青も男も女も、多くの市民ランナーが集まって来ます。
今より速く走りたい、走る意欲をかきたてたい、走る気持ちを維持したい、走る仲間が欲しい、 一人では出来ない練習をしたい、好きな走りで充実感と連帯感を味わいたい、 いつでも自分の走力に合った仲間がいる、一緒に走る喜びを享受し合いたい、 といったところが共通する心情でしょう。
営利目的や軟派目的では相手にされません。
「一衣帯水」にアトミクラブを見立てると、その細き流れに添って走っていこう、 走る仲間同士が流れの中で鍛え合っていこう、 個々の生活を尊重しつつも走る喜びで繋がろうなどと願いつつ、 市民ランナー達は周辺から集まって来るのでしょうか。
各々仕事を持ちながらも、仕事社会とは隔絶した走る世界を大切にしていこうという、 気持ちの上で近接している人々の集まりがアトミクラブなのでしょう。
その一人ひとりの思いが滔滔たる水の流れとなって、 創設25年を迎えるに至っていることは喜ばしいことです。 管理意識と個性が強すぎる人が前面に出るような組織だったら今日の盛況は無かったことでしょう。
「青東クラブ」と「みすじクラブ」が合流して一筋の流れとなって、 「アトミクラブ」の流れは未来に連綿と続いているのです。
アトミクラブの基本的な考え方は、健康に留意しながら仲良くいつまでも走り続けることにあります。 いたずらな縛りがありません。
練習会への参加が自由で、伸び伸びと走ることができる点、大会参加を拘束せず、 個人の自主性に委ねられている点、個々に走力が違うことを前提に、 それぞれの努力を認め合い尊重し合う点、等々、記録向上だけを目指すと捨て去りかねない面を大切にする、
優れた理念が備わっています
。 速さのみを追い求め、記録が全てであるようなら、 今日のアトミクラブはなかったはずです。
数値的な速い遅いを価値観の中心に据えることなく、 一人ひとりの努力や意欲や頑張りが、そのまま認められるということは、とても大切なことです。
制約のない自由はあり得ないけれど、無意味な拘束のないクラブがアトミクラブです。
わきまえのあるメンバー達によって支えられているクラブです。
アトミのメンバーは、いがみ合って紛争の火種をくすぶらすのはつまらないことであると考えます。
「一衣帯水」を共有する仲間として、互いの人格と人生を尊重し合い、 相互に魅力的であり刺激的であり続けたいと願うランナーの集まりです。
結果、メンバーは互いに一衣帯水の適度な距離を保って織田フィールドに集います。

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一期一会(いちごいちえ)

RUNNER's四字熟語 その17  2009年1月 アトミ通信99号掲載

一生の間に一度だけ会うこと。
生涯に一度限りであること。
人との出会いを大切にすること。
一生に一度の貴重な出会い。
出会いを生涯に一度のものと心得てもてなすこと。

さて、ランナーのあなた、「一期一会」は茶会だけでなく、走友同士であっても大切にしたいことです。
今回はK氏のマラソンとの出会いに取材してみました。
マラソンを始めたのは13年前。 医者から成人病予備軍の典型数値だから薬漬けになるのが嫌なら運動しろと言われました。 メタボリック症候群などという言葉は使われていませんでした。
高校時代から20年維持していた53kgが、肩を傷めて草野球を止めて以後いつの間にか68kgに増えていました。
一人でもできる運動をと思い、5月に家の近くの公園でジョギングを始めました。
次第に距離と走る時間を延伸していき、その年の河口湖マラソンが初フルでした。
号砲から3q通過まで30分の大渋滞を体験、ペース取りも分からぬまま4時間12分のゴールでした。
その後、地元の走友会に誘われて走る仲間ができました。
名刺の要らないおつきあいは新鮮でした。
走る仲間が徐々に増えていきました。「ランナーズ」を読んで李正順さんの店に顔を出しました。
記事を書いた夜久弘氏と時々走るようになりました。
高橋尚子がシドニーで金メダルの日、田麦山クロスカントリーで宇佐美彰朗先生から第2位のトロフィーを手渡されました。
「ひとよりも一汗多く」の碑の前でした。 その打ち上げで初めてアトミクラブの名を耳にしました。「夢舞いマラソン」の予行にも加わりました。
2001年元旦、お台場から代々木公園まで、車の通らない都心の道は爽快でした。大島幸夫氏との邂逅です。
「notoとmasumiの伝言板※」が立ち上がって間もない頃、看板娘二人に出会いました。
皇居で多くの走友を得ました。
「夜久弘のランニングの日々」もアップされました。
コムラッズ帰りのnotoさんに「稲荷湯」を教えてもらいました。
夏には霧ヶ峰を中心にビーナスラインを走ることになりました。
織田フィールドには数ヶ月迷ってから足を運びました。
体育会系意識の強いクラブなら願い下げと思っていた私ですが、若いメンバーと肩を並べて練習する年配ランナー達を見て、安心しました。
その日から水曜日は養老の常連になりました。
その頃には体重も56kgに落ち着いていました。
 今は還暦を迎えたK氏、マラソンとの出会いも、一人一人との巡り会いも、練習やレースの機会も、正に「一期一会」の思いの積み重ねとのことです。 25周年に因み、アトミクラブでの記念すべき出会いの数々も取材してあります。改めて紹介しましょう。
茶の湯では、一生に一度の機会との認識で主客ともに誠意を尽くし合うのが心得とのことです。
アトミクラブでも、普段から一緒に走るランナー同士ですが「一期一会」を心に、お互いの練習努力に敬意を払って走り続けたいですね。

※notoとmasumiの伝言板」は能登(高木)晴美さんと飯野(飯野)真澄さんの伝言板で、毎日多彩な人たちの書き込みがありました。いまは閉じていますが、当時はたいへん人気があり1日に300から400のアクセスがありました。

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一念発起(いちねんほっき)

RUNNER's四字熟語 その9  2007年9月 アトミ通信91号掲載

ある事を深く心に思い込むこと、またその心。
新たな決意の実現を目指して立ち向かおうとすること。
思い立った事をひたすら成し遂げようとすること。
心を入れ替えてある事を成し遂げようと決意すること。

さて、ランナーのあなた、 しようと決心した動機は何でしたか。ランナーの数だけ理由があるのでしょうが、老いも若きも男も女も、それぞれの思いで皆、ランナーであり続けたいと願い、努力しているはずです。 苦しみを求めて走るランナーはいません。走る楽しみを求め、各々の目標を持って、仲間を尊重し合いつつ走るのがランナーです。  一念発起には、レースでの第1位を狙って走ること、記録を狙って走ることも有りですが、身体をこわさずに何歳まで走り続けられるかを目指すことだって有りです。 仕事以外に走る仲間を増やそうとすることも有り、ジョガーからランナーへの転身を図りたいというのも有りです。 フルマラソン完走を100回、1000回と追うのも有り、健康維持を目的にマイペースを重ねることも有りでしょう。 一念発起してアトミクラブの練習や合宿に参加したランナーも多いと思われます。 市民ランナーは走ることが仕事ではありません。月間300q、400qを走るには相当な覚悟と意志がいります。
 速く走るための練習をしようと「思うだけ」なら一瞬ですが、続けて努力して走力に結びつけるためには、虚仮(こけ:愚か者)になることも必要なようです。 それより先に、まず「発起」しなければ、天に通ずることも、岩をも徹す(とおす)こともありませんね。 一筋に心に深く思う、最初の「一念」が大切なようです。ただ、一念の向け方次第では、その執念によって仏にも餓鬼にもなる(一念化生・いちねんけしょう)そうです。 闇雲に無理して頑張っても、怪我や故障をしてしまっては元も子もありません。 勝負ばかりを価値観として共に走る仲間を敬う気持ちを忘れては、走友の楽しみを否定することになりかねません。 何事も過ぎたるは猶及ばざるが如し、仁王に踏みつけられる餓鬼になっては、つまらないですね。 アトミの、単一の価値観を押し付けない空気を大切にしましょう。

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一寸光陰(いっすんのこういん)

RUNNER's四字熟語 その8 2007年7月 アトミ通信90号掲載

一瞬。 短い時間。
一般に「一寸の光陰 軽んずべからず」の意で用いられる。
時間は待っていてはくれない、だから僅かな時間でも疎かにせずに努力することだ。
目的達成のためには、少しの時間でも大切にしなくてはならない。

さて、ランナーのあなた、 これは、ランナーの私たちが日々実践していることですね。 睡眠時間を割いて朝練習する人、朝夕に通勤ラン・帰宅ランで走る距離を伸ばす人、短い昼休みを削っても集中練習する人、 残業で遅くなっても競技場や公園で走ってから帰る人、一日の締め括りにランナー御用達の銭湯で汗を流して帰宅する人、 みんな寸暇を惜しむように走る時間を作っています。 コツコツ努力して漸く成果に結びつく点、学びと一緒ですね。
市民ランナーは皆、本来の仕事をこなした上で走っています。 走らなければ速くならない、練習しなければ強くならない、ランナー体型は鍛えなければ備わらないことが解っています。 だから、僅かな時間を見つけては走力向上・保持の努力を続けます。
練習無しにフルマラソンを完走することは出来ません。 サブフォー、サブスリーの完走は、弛まぬ練習が有っての成果です。
自らのペースを作るために日頃の練習が不可欠です。 自らの限界を知るためにも練習は不可避です。 日々の積み重ねが大切な点、仕事も一緒ですね。
アトミのメンバー達は、木曜日以外は個別に走る時間を作って練習していますが、 週一日は競い合う仲間を求めて織田フィールドに集まって来ます。
練習開始の午後7時は、サラリーマンにとって若干の無理を余儀なくさせる時間です。 それでも毎回、100名を超えるランナーが集まります。 目的達成のためには練習環境も亦、貪欲に求めなければなりません。

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傍目八目(おかめはちもく)

RUNNER's四字熟語 その28 2010年11月 アトミ通信110号掲載

当事者では気付かないようなことに、部外者ならでは気付く点もあること。
自分よりも他者の方が物事を客観的に見られる場合があること。
「八目」は目数。八つの目に相当する陣地を獲る手の意(手数とは違う。八手先を読むと解するは誤り)。

 さて、ランナーのあなた、 いよいよマラソンシーズンの到来です。夏が長かった分、 急に寒くなって体調を崩しがちですが、ランナーの皆さんは大丈夫ですね。 むしろ、やっと走りやすくなったと、練習に打ち込んでいることでしょう。 織田フィールドの練習で走る仲間を見ていると、普段とは違う走りになっている様子に気付くことがあります。 肩に力が入りすぎていたり、肩のブレが大きかったり、腕振りが小さかったり、 肘の角度が狭くなったりしているのですが、本人はそのことに気付かずに、たいていは辛そうに頑張っています。 TTの日など、身体のバランスもリズムも狂ったまま、苦しい走りに終始し、当然タイムも落ち込みます。 苦しくなり辛くなればブレスも荒れますから、その点では本人も自覚しやすいのでしょう。 しかし、どこに無理が来ているのか、どこを意識すれば改善できるのか、 それ以上走ってはいけないのか、我慢しても走り抜く場面なのか、自分ではあまり解っていないものです。  原因は、レース翌日であったり、合宿練習の直後だったり、週末の距離走の疲れだったりするのですが、 アトミの練習では、普段とは異なる走りの人に「リラックス、リラックス!」「肘をゆるめて!」 「肩の力を抜いて!」「歩幅が狭くなっていいるよ!」などと声をかけると、それだけで走りが切り替わり、 本来の切れを取り戻すことがあります。 「傍目八目」のなせる業なのかもしれません。 即効性はなくとも、具体的な指摘による気付きが復調の契機となる事があります。 「前へ付け!」、「頑張れ!」、「我慢しろ!」などの掛け声では、ゴール前ならいざ知らず、 「もっと苦しめ」と言っているようなもので、励ますだけに終わってしまいます。
傍目八目で気付いたことをストレートに指摘した方が、走りの切り替えや走りの修正に結び付くのかもしれません。

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温故知新(おんこちしん)

RUNNER's四字熟語 その6 2007年3月 アトミ通信88号掲載

過去の事柄や学説・古典などをよく学び取り、よく考え究めながら、そこから現実に相応しい新しい知識や見解をもつこと。
既に学んだことをしっかり復習して、新しい道筋を見つけること。
進化・成長は、過去・現在・未来の連綿たる流れの中にある。
過去を調べるだけでは発展性に欠け、新しさを追求するだけでは危うい。

さて、ランナーのあなた、 2007.2.18第1回東京マラソンには参加しましたか。 日本で初の大規模都市型マラソン、氷雨にも拘わらず完走率96.7%という驚異的な数字を残しました。 スタート直後、実況中継のアナウンサーが「東京の歴史と文化を巡る温故知新の42.195q」と言っていました。 東京の新旧の観光名所を縫って走るマラソンということで「温故知新」を用いたのでしょうが、 四字熟語の使い方としては浅いものです。
東京マラソン企画室では、ボストン、ベルリン、ロンドン、ホノルル、ニューヨークなど、 先行の大規模市民マラソンを参考にして東京マラソンを練り上げたと聞きます。 正にこれが「温故」です。どこまで故きを温ねられたかは別にして、過去に学ぶことは必須です。 問題は、その上で現実に即したテーマや企画や理解をいかに考えて行くかにあります。 そうでなければ「知新」には結び付きません。
30000人規模のマラソンでスタート付近に仮設トイレ600基では不足するのが当然です。 コース途中のトイレも5分以上も並ぶ列が出来るようでは選手とマナーへの配慮を欠いた運営です。 水は、ペットボトルが用意されて今回は足りたようですが、暑ければ飲むだけでなく頭や脚を冷やすためにも使われます。 命の水は多すぎるくらい用意されていて丁度です。 季節外れの高温で水が無くなり完走率50%を切った2003.11.16東京国際女子マラソンでの教訓は生かされたのでしょうか。
来年は、第1回を振り返り考えて、そこから第2回以降の発展に繋ぐ工夫と努力が不可欠となります。 世界のシティマラソンの師表として仰がれるまでに「東京マラソン」が支持され理解されることを望みましょう。 「温故知新」が達成される日を待っています。

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外柔内剛(がいじゅうないごう)

RUNNER's四字熟語 その3 2006年9月 アトミ通信85号掲載

外面は柔和に見えても、内面は心が強く手強いこと。
表面は穏やかそうに見えながら、実際は意志強固なこと。

うわべはおとなしそうに見えても、本当は気が強く心がしっかりしていること。

 さて、ランナーのあなた、織田に集まるメンバーなら、マッチョ系の人を見てもマラソンが速いランナーとは思いませんね。 経験的にランナー体型とは別物だと知っていますから。むしろ曲者は頼りなさそうな人。 見るからにひ弱そうな人と走ったら意外と持久力も速さもあって、自分の方がつぶされてしまった、そんな経験はありませんか。 見かけだけで柔弱だと決めつけてしまうと、とんでもないことになります。
マラソンを4分15秒〜4分30秒/qペースで走る男性ランナーの方、レースで女性が並びかけたらどうしますか?
@ペースを上げて引き離しにかかる。
A負けまいと思って併走する。
Bしばらく併走して様子を見る。
Cぴったり後ろについて走る。
Dひたすら自分のペースを守る。
よほど走力に違いがあれば@も良いのでしょうが、D以外の男性ランナーは大半がつぶれてしまいますね。 Cでは嫌がられること必定、思い当たる男性はいませんか?
 マラソンで5000mを21分程度のペースで走っているランナーなら、皆、相当な走り込みをして実力を備えているはずです。 男性・女性という比較ではなく、ランナーとして対等な考えを持たないとレースを戦うことは出来ません。 まして女性ランナーでその速さなら並みの走者ではないのです。 男性も、つぶれずに済むような潔いレースを心がけるしかありません。 男性は女性の柔らかさを好むものですが、表面だけを捉えていては相手にされません。 奥ゆかしく秘めた強さを見極め尊重してこそ、共にランナーとして競うことが出来るというものでしょう。 見かけにとらわれると、見かけ倒しの男になりかねません。
 やり出すととことんまでやり通す心(しん)の強さ、 苦しみや限界に耐える心の強さは、女性の方が優れていると感じられます。 とりわけ織田に集まる女性ランナーたちには…。

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臥薪嘗胆(がしんしょうたん)

RUNNER's四字熟語 その4 2006年11月 アトミ通信86号掲載

復讐の心を忘れずに長年苦労すること。
目的達成のために長い間つらい努力をすること。
自分の身を苦しめて奮い立たせること。

何らかの挫折があっても、雪辱を果たすためには執念も必要となる。

 さて、ランナーのあなた、あなたはどこまで勝負に執着を持っていますか。
 勝負へのこだわりは、実際のレースの場だけとは限りません。 練習の段階から始まっていることです。 来年2月18日の東京マラソン、当選した人はもうランニングスケジュールを立てて練習に取り組みはじめたことでしょう。 先ずは、十分な走り込みにより体づくりをし、心肺機能を高め筋持久力の強化を図りますね。 次にはペース走を入れて自分に最適なマラソンペースを身に付けるための練習をします。
そして難しいのが、レース前の調整です。 練習量を落として疲労を抜く必要がありますが、体力・走力まで落としてしまっては完走さえ危うくなります。 自分の体調を最高の状態に仕上げてレースに向かうことが理想ですが、不安になるとついつい練習過多に陥って自滅しかねません。
 レースに備えるこの長い練習こそ、正に薪に伏し、胆を舐める期間です。 克つためには、ゴツゴツの寝床やニガイ熊胆に相当するような辛く苦しい練習が不可欠となりますから、知らず識らず手を抜いたり、挫けそうになることもあるでしょう。 そのような時に励みとなり頼りとなるのは、普段から共に競い合い一緒に練習しているアトミの仲間たちですね。

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画竜点睛(がりょうてんせい)

RUNNER's四字熟語 その15  2008年9月 アトミ通信97号掲載

物事の肝心なところ。 物事の眼目。
物事を完成させるにあたり加える最終の一手。
最後に大切なところを加えて仕上げを完全にすること。
僅かなことで全体が引き立つこと。
仕上がりを際だたせる肝心かなめ。
少し手を加えてだけで全体が活きること。
物事を完全に成し遂げること。
「画竜点睛を欠く」で、ほぼ出来上がっているのに肝心な点が欠けているため仕上がりが不十分である喩え。
詰めが甘いこと。

 さて、ランナーのあなた、
画竜点睛の走りとは何でしょう。画竜点睛を欠く走りとは何でしょう。
 サバイバルレースに競り残って構成されたトップ集団を想定してみましょう。
勝負の世界なら、最後部からスピードの切り替え鋭くトップに躍り出てそのまま振り切って優勝のテープを切るのが画竜点睛の走りです。
せっかくトップ集団を引っ張る良い走りを見せながらも、ラスト勝負で後続に刺され競り負けるのが画竜点睛を欠いた走りと言うことになります。
大向こうを唸らせるような切れ味を見せる走りは、ただ闇雲に走り込んだりスピード練習すれば出来ると言うわけでもなさそうです。
練習無くして良い走りは叶うべくもないのですが、最終調整の段階で何をなすべきか、認識一つで結末は大きく変わってくると思われます。
自分の考えも必要ですが、周囲の助言やコーチの指導が大きな意味を持ってきます。
市民ランナーである私たちが自分を客観視するには、練習仲間の走りを観察すること、ライバルの走りを分析することが欠かせません。
ふだん和気藹々と走っている仲間であっても長所・短所がそれぞれで、自分に照らして看ると結構ヒントが隠されているものです。
腕振りだけでも、意識するかしないかで走りが変わってきます。

 伝えられる故事は故事として、この四字熟語で最も魅力的で示唆に富む文字は「睛」です。
よく澄んだ瞳が「睛」ですが、乳幼児の無垢な目とは別物です。
「睛」には、一朝一夕では得られない深みがあります。意欲、意思、向上心、前向き、懸命さ、直向きさ、工夫、努力、辛苦、克服、継続、習練、研鑽、貫徹、自信、自負、信念などを感じさせます。
世俗的利害からも離れ、全ての雑念を払った後の無償の清澄さが「睛」です。
何かが成し遂げられたその瞬間にのみ宿る輝きです。観る者を感動させる美しさが籠められています。

マラソンでは、バルセロナ〜アトランタの有森裕子に、シドニーの高橋尚子に、アテネの野口みずきに我々が観たものが「睛」でした。
北京では、日本で育ったケニアのS.K.ワンジルに「睛」が見られました。
日本陸上では、見事なバトンリレーで銅メダルを引き寄せた塚原直貴・末續慎吾・高平慎士・朝原宣治の400mリレーがまさに画竜点睛でした。
リレーの眼目を世界に示すレース運びに魅せられました。
アメリカ・イギリス・ナイジェリアなどの有力なメダル候補がバトンミスで画竜点睛を欠く中での快挙です。
 天を衝くほどの意気込みのみならず、いざという時に結実させて初めて獲得することができる「睛」、目薬を注した程度でスムものではなさそうですが、私たちはせめて、精一杯練習して成し遂げた「完走の喜び」の中に「自らの睛」を味わいたいですね。
自分を誉めたくなる走りを目指しましょう。

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虚心坦懐(きょしんたんかい)

RUNNER's四字熟語 その25 2010年4月 アトミ通信107号掲載

心が広いこと。 心にわだかまることが無く、落ち着いた心情。
先入観にとらわれない、素直でさっぱりした様。
胸につかえる不満や不信の感情がなく、心が平静なこと。
物事に臨むにあたり、わだかまりなく心が平らかなこと。
心が安らかなこと。
愛憎の心情や我欲成心を捨て去った、公平無私な気持ち。

さて、ランナーのあなた、政治家が偉ぶって、さも度量が大きいかのように、何だか分からない意味合いで使うことの多い言葉ですね。
言葉の使い方で胡散臭さを感じる向きもおありでしょうが、四字熟語自体に罪はありません。
ランナーにとっては、レースのスタートラインに立った時と、ランナーズハイになっている時の心境が「虚心坦懐」に近いと思われます。
 アップ段階までは誰しも、結果を残そうと意欲に溢れていたり、走りの組み立てにこだわっていたり、ライバルとの競争心に燃えていたり、体調が思わしくなく気がかりだったりするものです。
しかし、いざスタートラインに並び、スターターが「位置について」の号令を出した瞬間、号砲が鳴るまでの数秒ですが、静寂が訪れます。
それまで話していたり、足を踏み鳴らしていたり、思い思いに屈伸などをしていたランナーたちが、一様に口を閉ざし、耳と心を澄まします。
心の中のわだかまりも消え、一途にレースに向かおうとする一瞬です。
その時のランナーの心境は、こだわりも欲望も成心も無く、素直な個に立ち返り、ひたすらに直向きなものとなっています。
正に「虚心坦懐」の心の静寂です。
レースが始まり、最初の5km、10kmは位置取りや体調把握やペース調整など、心にわだかまりが生じることが多いのですが、調子が乗ってくると肩の力も抜けて走りが楽になります。
苦しいとか辛いとかの雑念も振り払われ、一定のペースで走っている頃も、「虚心坦懐」の心境にあると思われます。
男性にありがちですが、終盤に女性に抜かれて空元気を発揮すると邪心が生じ、自分を見失い、虚心坦懐から外れます。
自らのペースを崩し、空しい結末を招きかねません。
ラスト近く、限界が訪れようとする頃はそれどころではありませんね。

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乾坤一擲(けんこんいってき)

RUNNER's四字熟語 その27  2010年9月 アトミ通信109号掲載

自分の運命を賭けるような大仕事。
全てを一度に投げ打って出る、一か八かの大勝負。
のるかそるかの決断。
死を賭した決断と実行を賞賛する意味合い以外に、荒仕事や無謀な取り組みに喩える場合もある。

 さて、ランナーのあなた、
アトミクラブでは全国OB・OG駅伝、東日本国際駅伝、奥むさし駅伝などのレースに多くのチームを送り込んでいます。 タスキを繋ぐレースの特性として、練習状況やその日の体調など、個人的都合を云々していられない状況がしばしば生じます。 意地でも抜かれるわけにはいかない、前を抜いて順位を上げよう、 10秒、5秒、1秒でも次走者に繋ぎたいといった気持ちから、 自らの限界を超えたペースで走らざるを得なくなった場合、 乾坤一擲の気合いが必要になります。
限界ぎりぎり気力だけで中継地点まで走って来て、タスキを渡した途端に倒れ込み荒く息をする光景などは、 正に乾坤一擲の勝負の果てを思わせます。
乾坤一擲の勝負は、比較的短い時間、短い距離に合っているように感じます。 マラソンやウルトラマラソンでは、その距離の長さにおいても、その時間の長さにおいても、 一か八かの気負いはDNFに繋がるだけで、荒仕事には向いていません。
日常的な鍛錬があっても、100mで1秒、1000mで10秒オーバーペースになれば足が止まるか潰れるかの競技です。 あり得るのは、40kmを過ぎてから、95kmを過ぎてから、イーブンペースで乗り切ってきたご褒美に、 時計とにらめっこしながらペースアップする時に「乾坤一擲!」とラスト勝負で叫ぶ程度でしょうか。
その頃は、のるかそるかの勝負に出るよりも、走りきることの方が重要課題になっています。

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捲土重来(けんどじゅうらい)

RUNNER's四字熟語 その1 2006年5月 アトミ通信83号掲載

土煙を巻き起こすような激しい勢いで、一度敗れた者が再び攻め返してくること。
一度失敗した者が、再び勢力を盛り返して攻め寄せること。
勝敗は結果で分かれるが、破れても再度、覚悟して巻き返しを図ること。
かつて、松坂大輔が「リベンジ」を口にして新鮮でした。
「雪辱を果たす」ならまだしも、「捲土重来を期す」と言ったら、あまり耳に馴染まなかったかもしれません。
さて、ランナーのあなた、勝つつもりで出たレースで、思いがけず普段の練習仲間に負けてしまいました。
あなたならどう感じますか?
@勝負は時の運だと諦める。
A疲れがたまっていたからと自分を慰める。
B悔しくて次のレースこそは負けるものかと雪辱を誓う。
敗北の羞恥を心に秘め、以後、必死になってトレーニングを重ね、自らの弱点を克服し走力を蓄えて、やがて、巡り来たレースで再び競い合って練習の成果を発揮し、雪辱を果たす。
これなら「捲土重来」です。
Bの気持ちを忘れずに続けた努力こそが宝です。
Iさんは、東京荒川でサブスリー達成を喜んだのもつかの間、記録は3:00:00でした。 1年後の同大会でサブスリーを実現させましたが、その間、高尾での陣馬往復を自らの練習メニューに組み込み、 脚力と持久力を養ったそうです。競った相手は自分でした。
@は淡泊ですが、勝敗以前の問題です。
Aは言い訳・負け惜しみの類。でも、ふと口にしてしまいますね。

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光陰如矢(こういんやのごとし)

RUNNER's四字熟語 その12  2008年3月 アトミ通信94号掲載

時の流れは、矢が飛ぶように速く過ぎ去って、再び戻ってくることのないものである。
月日の経つのは飛ぶ矢のように早いものだ。
年月は飛ぶ矢のごとく速やかに過ぎ去って、取り返しがつかないものだ。

さて、ランナーのあなた、市民ランナーですから、仕事と生活を大切にしながら走る時間を作っています。
あなたが走らなくても誰からも苦情は言われません。 好きで走っている以上、全てが自己責任です。 寸暇を惜しんで練習を重ねるのには相当な目配り・気配りも必要になりますね。
1月20日の千葉マリン、「サンスポ」(1/29付)の完走者成績を見ると、 公認ハーフの部にアトミのメンバーだけで男女40名以上が出場していました。 女子1時間30分切りを果たしたNMさん、AKさん、YTさん、HMさんらの力走が光ります。 UKさんも達成間近なところまで来ています。皆、光陰を軽んずることなく練習してきた証しです。
優勝タイムは、男子が1:04:24、女子が1:13:17でした。
1分ごとの記録を年齢層で見ていくと、男子で30代が登場するのは1時間07分が最初、二番手は1時間09分になります。 40代は1時間12分が、50代は1時間15分が、60代は1時間24分が最初です。 年齢と共にスピードが落ちる事実はそのとおりなのですが、各年齢層で上位を走るランナーたちが、常日頃どれほどの練習をしての成果なのだろうかと思うと、気が遠くなります。
マラソンはフルでもハーフでも、日常の練習と努力の継続が無ければ、そのペースで走ることも完走することもできません。 66歳1:24:48のST氏は60歳を過ぎてもサブスリーで走ったフルマラソン年齢別ランキング1位の常連ですから別格としても、60代の二番手は63歳1:28:51のER氏で侮ることの出来ない速さです。
還暦目前の59歳は1:27:11のIA氏、1:28:18のKK氏、1:31:21のYE氏の順です。
女子では30代の登場は1:19:06が最初、40代は1:26:13がトップです。 50代になると52歳1:28:33、55歳1:39:23、56歳1:49:17と間隔が開きます。 60代の完走者はいませんから、58歳1:51:37のHEさんが最高齢ですが、不断の努力があってこそ可能になる実りです。 容易に真似のできないことであると感嘆します。 ともすると、順位とタイムばかりでレース結果を見がちですが、自分がその年齢になった時にそのタイムで走っていられるだろうかとの視点を持って推測するのも、明日の自分の練習に役立つのではないでしょうか。
若さと素質だけで走っていられる季節はあっという間に過ぎ去ってしまいます。 二度と帰って来ることのない練習時間を大切にして日々のランニングを続けたいものですね。

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好事多魔(こうじ ま おおし)

RUNNER's四字熟語 その22 2009年11月 アトミ通信104号掲載

よいことには邪魔が入りやすいものである。
善い行ないにはとかく妨害が入りやすい。
よいことには得てして波風が立ちやすい。
有益だと思ってすることでも、邪魔の入ることが多いものだ。
調子に乗ったときに注意しろとの警句。

 さて、ランナーのあなた、
せっかく東京マラソンに当選したのに出張が入ってしまったとか、せっかく横浜国際女子マラソンに向けて調整していたのに急用ができて出られなくなってしまったとかいう経験は有りませんか。 ランナーにとって東京マラソン当選も好事、横浜国際マラソン出場も「好事」ですから、降って湧いた出張や急用は「魔」としか言いようがありません。
 新たなことに取り組む際の心得は、限界を決めずに一から始めることです。 自分で限界を決めてしまうと、それが壁となって容易にそこを越えられなくなります。 「自分は駄目だ」と思い、「もう限界だ」と感じることが「魔」となり、自分の可能性を狭めます。
 ランニングもそうです。 まずは“try”が必要で、“challenge”は慣れて楽しさを覚えてからでよいのです。 走りたくなる気持ちが「好事」です。 小さなハードルが次々に現れても、練習次第で難なく越えて行かれるものです。 今の走りが精一杯だと感じてしまう心が限界を作ります。 「魔」を招きます。 日々の体調とは全く別次元のことです。 体調の悪いときは無理しないのが当然です。 アトミクラブの練習でも、自分で限界を決めつけるのではなく、今の自分の走力よりもほんの少し(100mで1秒)速いグループで走ろうとする気持ちが「魔」を克服していきます。 マラソンがメンタルスポーツだとされる所以です。
 何事でも誰でも限界はあり、それを識ることも大切です。 挑戦し続けた後に漸く分かる限界は意味が違います。 健康を害さな いためにも率直に認めざるを得ません。 年齢と速さの相関は否定できませんが、年代なりの新たな“challenge”があるはずです。
サブスリーを目指して練習を重ねた人が体験する「好事多魔」が有ります。 イーブンペースなら4分15秒/km、21分15秒/5kmで2時間59分20秒ですが、そうそう設定ペースでいくものではありません。 十分な準備をしてレースに臨んだとしても、当日の風、気温、天候、体調、コース、スタートの位置などの諸条件まで思いどおりにはなりません。 18分/5kmの走力を持つ人でも、最初は21分〜22分/5kmで抑えて入るはずです。 「魔」が差すのは、10kmを過ぎて身体が動き始めた時(「好事」)です。 調子に乗って4分/kmを切って走ってしまう(「魔」)と、30km〜35kmで限界が来ます。 足が止まり、レースをあきらめざるを得なくなります。 十分な練習を積んでサブスリーをイメージしたランナーですから、達成可能な目標だったはずです。 自ら招いた「魔」で、自分のチャンスを捨てることになります。

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呉越同舟(ごえつどうしゅう)

RUNNER's四字熟語 その7 2007年5月 アトミ通信89号掲載

仲の悪い者同士が同じ舟に乗り合わすこと。
敵対するもの同士、仲の悪いもの同士が、お互いに不可避の状況で同じ場所や境遇に居合わすこと。
立場・感情を異にし、敵意を抱き合う者でも、共通の 利害・目的・困難に対しては協力して立ち向かうこと。
状況により敵同士が手を携えて問題解決に当たること。
左手と右手が補完し合うように互いに助け合うこと。

 さて、ランナーのあなた、呉も越も、共に長江(揚子江)下流域南方に展開した国家です。
限られたフィールドで、国家存亡をかけた戦いを余儀なくされた両国の兵達は、お互いに憎み合い戦うしか無かったのでしょうが、それでも、交通手段として河川を舟で渡る際に乗り合わすこともあり、不時危急の折には協力して事に当たったと言うことです。
 ランナーの場合には、憎み合う必然はありません。 戦争に駆り出されて命を賭して戦うわけではありません。 競走する相手とライバル心は持っても、お互いがマナーやモラルを逸脱しなければ、最悪の人間関係に陥ることはありません。 レースとなれば競り合い対抗心を燃やす相手でも、仲間であって仇敵ではないのです。
 アトミクラブに集まってくるランナー達は、ほとんど皆、別のチームにも所属しています。 AT、KR、Ko、SY、RS、Nr、Po、TC、De、Ka、TP、TB、Ji、OE、Ts、Ss、‥‥、企業クラブや地域の走友会などに属しつつも、木曜日ごとに織田フィールドに集まって一緒に練習している仲間達です。
駅伝などでは、普段の所属チームの襷で出場することがあり、中継点に集合したら何人ものアトミクラブの仲間がそれぞれのチームゼッケンを胸に集まっていたなどという経験があると思います。
時に、レースでは勝負をかけて熾烈に競い争う者同士が、同じ環境条件の下に、同じ目的で同じ場で時を同じくして高め合う、そのような「呉越同舟」も有って良いのではないでしょうか。 呉や越の兵士ならぬ、多くのチームに所属するランナーが、共通の目的を持って集まる場「織田フィールド」は、自らの走力を高めるため、より良い練習環境を得るため、まさに練習の場としての「舟」なのです。 ランナー版「呉越同舟」、付会牽強でしょうか。

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七転八起(しちてんはっき)

RUNNER's四字熟語 その18  2009年3月 アトミ通信100号掲載

何度倒れてもその度に起き上がること。
失敗を重ねてもめげることなく再起すること。
人生は山あり谷ありが当たり前。
一度や二度の失敗にへこたれずに頑張れとの励まし。
浮き沈みがあって当然なのが人生。
浮き沈みの激しい人生の譬え。
「七転び八起き(ななころび やおき)」から転じた和製の四字熟語。

 さて、ランナーのあなた、
フルマラソンで、思いどおりに走ることができたことは何回あるでしょうか。 どんなに練習を積んでも、毎回イメージどおりに走っている人などいないことでしょう。 今日こそは自己ベストが出ると確信しながら、路面の凸凹に足を取られて転倒し顔も手も血だらけになってしまったとか、 最終の給水で他のランナーと交錯して転び骨折してしまったとか、 給水が儘ならず30q過ぎてから脱水症状が出て救急車の世話になったとか、 走友の身に生じた事々を仲間内でも耳にしたことがあるはずです。
コンスタントにサブスリーを重ねている人でも、レースの一回一回は違う思いで走っています。 コンディション一つでも、晴れているか降っているか、風が強いか弱いか、暑いか寒いか、その日の体調が良いか悪いか、 スタート前にトイレに行かれたか行かれなかったかも含め、一様の条件の下で走ることなど有り得ないことです。
42.195qを走り抜くということは、体力の限界との挑戦であるばかりでなく、メンタル面でもぎりぎりの挑戦です。 良いレースをしようとすれば、身体能力、持久力、判断力、忍耐力、想像力、状況認識力、克己心、挑戦心のいずれもが必要になります。 スピード練習が欠けていた、月間走行距離をもっと延ばしておけば良かった、35q走をもう一度やっておけば良かった、直前の体調をもう少し整えておけば良かった、などと走りながら反省ばかりが頻りになると、思うように足が運ばなくなります。
仕事が忙しくても、残業続きでも、家庭の都合があっても、飲み仲間の誘いがあっても、視たいテレビ番組があっても、天候が思わしくなくても、様々に遣り繰りして練習の時間を確保している市民ランナーにとって、ベストの体調でレースを迎えることは容易なことではありません。
1レースの中でも七転八起は生じてきます。 呼吸が苦しくなってきた時、徒に息を吸い込んでは過呼吸になってしまいます。 息を吸うことに意識があるようでは、DNFが時間の問題です。 息を吐ききることを意識するのがペース維持の秘訣です。 七度苦しくなっても八度走りを取り戻すための呼吸法です。 息を吐ききると横隔膜や腹筋などが強く収縮し、その反発で自動的に胸部や腹部が拡張し、深い呼吸が出来るのだそうです。 多くの空気を取り込んで、快調な走りを、頑張りのきく走りを取り戻しましょう。
 七転八起は起き上がる希望があるから励まされます。 助かります。 転がりっぱなし、倒れっぱなしの七?八倒(しちてんばっとう・七転八倒)では悶絶しかありません。

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四面楚歌(しめんそか)

RUNNER's四字熟語 その20  2009年7月 アトミ通信102号掲載

味方だった者がいつの間にか敵方に回ってしまっていること。
時節が味方しなくなり、孤立無援となった状態。
敵の中に孤立して助けのないこと。助けがなく孤立すること。
周り中が反対者・敵対者ばかりで、味方がいないこと。

 さて、ランナーのあなた、
周りが敵であるか否かは別にして、競技者はひとたびレースが始まれば孤立無援になります。 自分の走力を頼る以外に術がないのがマラソンです。 練習仲間だった人たちと一緒に走っていても、一人ひとりのレースです。 置き去りにされたとしても、裏切られたわけではありません。 体調も含め自分の走力が伴わなかっただけのことです。 敵も味方もなく、我が身を晒してひたすらにゴールを目指す競技がマラソンです。
組織であれば、四面楚歌の発生は有り得ることです。 項羽の楚軍は連戦連勝の軍隊でした。 項羽の号令一下、寸分の狂いも許さぬまで統制を図った組織でした。 対照的に劉邦の漢軍は、勝ち目がないと逃げまくり、周囲に集まる者共を頼みとして何度も組織を立て直さざるをえませんでした。 強烈な個性が主導して結果を追い求める組織もあれば、強烈な個性を埋没させて戮力により結果を導く組織もあります。 強烈な個性が奏功する場合もありますが、その個に何かがあれば求心力は失われます。 時の移りはそのまま力の移りです。 個人の力を恃んで引っ張ろうとした愚かさが、楚の脆弱さを露呈させました。
アトミクラブはどうでしょうか。
創設25周年を経て、400名を越すメンバーがいて、日常的に毎週の活動を持ちながらも、大きなトラブルを抱えない組織は珍しいと思います。 勢力争いに明け暮れることのない稀有なクラブ組織です。 アトミクラブには、無意味な争いがありません。 無意味な強制もありません。 特定の個人によって作られた組織でないことがアトミクラブの強みとなっています。 強烈な個性と管理意識を嫌い、弁えのあるメンバーが組織を支える伝統がアトミクラブの特長になっているようです。 四面楚歌をかこつ心配のないクラブとして求心力を呼んでいるのです。 走りの刺激を求めて、老いも若きも集まって来ます。
 市民ランナーは、他者に管理されてまで走りを強制されたいとは思っていません。 「マラソンランナーには、粘りと計画性と自己管理がある」とは監督の言葉です。 織田に集うメンバーがお互いの人格を尊重しあう限り、ことさらに組織管理を云々することはないのでしょう。 自主性を認め合う組織として、皆が気持ちよく走る環境を整えるだけです。

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深謀遠慮(しんぼうえんりょ)

RUNNER's四字熟語 その11 2008年1月 アトミ通信93号掲載

奥深く容易には計り知れない遠くまで謀り考える事。
奥深く遠い先までを見越して考えた、しっかりしたはかりごと。
深くしっかりした考えで、遠い将来までも見通すこと。
遠くまでを見通した、深く確たる考え。

さて、ランナーのあなた、走ることで培ってきたあなたの走力はどの程度の域にあるのでしょうか。 フルマラソンを走った翌日でも後遺症に悩まされないで済む「走る身体づくり」は出来ているでしょうか。 ひどい筋肉痛、関節痛、腰痛、腱の痛みなどの異常は、練習の不足・過多・内容や当日までの体調管理を含めて、 どこかに課題がありそうです。 走るための身体づくりや走力の向上・維持にも、深慮遠謀は欠かすことが出来ません。
 ランナーとしての身体が備わるには相当な時間がかかります。 自分の身体の状況と練習による走力のバランスを、あなたはどの程度に考え、折り合いを付けているでしょうか。
 若さに任せて、速く走りたい一心で、負荷ばかりを与える練習をしてはいませんか。 身体を労り休める心配りは十分でしょうか。 走る身体づくりへの配慮は万全でしょうか。 「毎日が合宿」のように追い込んだり、突っ込んだりしていては、身が持ちません。
 年配者はなおさらです。若いときから長距離走を続けてきたランナーは、 速かった頃のイメージがいつまでも残り、加齢による今の筋力や心肺機能の現実を冷静に見られないことがあるようです。 過去の栄光にしがみつくよりも、今走っていられることを喜びとする方が、考え方としては深いように思われます。 周囲も、過去のあなたは知りません。 努力して走り続けている今のあなたに共感を持ち、感銘を覚え、魅力を感じるはずです。
 ランニングは速いに越したことはありませんが、年齢なりの走りがあると考えます。 過去は過去でしかありません。 他の人があなたを讃えて昔の活躍を誉めてくれるなら有り難いことですが、自らの過去をひけらかしては見苦しいだけです。
 遅れてきたランナーはどうでしょう。 メタボリック症候群対策で走り始めた人は、それこそ遠い将来までを見通して、筋力の強化を謀りながら、 何年もかけて我慢強く身体を絞っていかなければなりません。 60歳、70歳を過ぎて走っていられるためには、年なりの練習を考え実行することです。 老獪なまでの深慮遠謀があっていいでしょう。
 考え落ちにさえならなければ、思慮は深遠であるほど価値があります。 ランナー各々の心の持ち方一つで、市民ランナーとしての日々がずいぶん違ってくるように思われます。

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則天去私(そくてんきょし)

RUNNER's四字熟語 その30 2011年3月 アトミ通信112号掲載

天意自然を手本として指針を捨てること。
自我を払い私心を捨てて、自然に自らを委ねること。
大いなる自然を手本として、私心を捨て去ること。
小さな自我を取り去って、天意を手本として生きようとすること。
自らの救いがたい部分を拭い去って、大いなる天に自らを委ねること。

さて、ランナーのあなた、 東京マラソンで、市民ランナー川内優輝選手が一躍2時間8分37秒のタイムを叩き出しました。 有力な実業団選手を凌いで、8月の世界陸上の代表の座を獲得しました。 大学時代、学連選抜で箱根駅伝に二度の出場経験を持つなど、素質は有ったのでしょうが、フルタイムで学校事務に携わる公務員が出した結果です。 土曜日には駒沢公園で距離練習をしていたそうですから、アトミクラブにも、一緒に走ったり走姿を見たりしているメンバーがいるかもしれません。 まだ23歳ですから、地に足の付いた生活と練習を重ねて、松田千枝さん、谷川真理さんがそうであったように、市民ランナーの星として輝いてほしいものです。
ランナーであれば誰しも、自己記録が伸びて走る意欲溢れる時期を経験します。 練習十分で臨んでも、天候や調子によって思うような結果が付いてこない焦れったさを経験します。 体調が悪いながら自重して走る内に意外な好成績に恵まれることを経験します。 いずれは体力の衰えを覚え、若い頃とは違う年齢相応な走りの必要を経験します。 でも、走り続ける喜びだけは50代、60代、70代になっても持ち続けたいのが、ランナーの偽らざる気持ちです。
20代の人に、70代の幸せを想像するのは遠いことでしょうが、若人と共に汗を滴らせ走る白髪世代の歓びを織田フィールドでなら垣間見ることができます。 月間400qの練習距離と5000m18分のスピードがサブスリーの条件のように言われますが、走り方や考え方次第では、たとえ250q20分でのサブスリー挑戦も夢ではないように思います。 個人差、年齢差、性差があります。 最大酸素摂取量やエネルギー燃焼効率など身体能力の科学的分析も大切でしょうが、市民ランナーは働きつつ時間を捻出して走ります。 故障しない身体作りと、故障した場合の徹底休養など、焦らず続ける精神バランスと心の強さが不可欠のように感じます。 「明暗」を分けるのは、若き栄華とスピード信仰からの脱皮でしょうか。 「馬の速度」と「牛の持久」、難しいのは後者です。 自分にできる練習を重ねた上は、私心の平衡を図り、結果は自然に委ねたいものです。
50代半ばの女性ランナーJさんが東京マラソンで、3時間20分余りで完走しています。 スタート直後に、蛙が手足を伸ばした形で転倒、よく踏みつぶされなかったものですが、膝を擦りむきながらもイーブンペースで走りきりました。 実は彼女は、ここ2〜3年で両足の疲労骨折を体験しています。 全く走ることのできない月日がありました。 完走の背後に、どのような諦念と努力の時があったことか…、大好きなランニングに乾杯!。

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大器晩成(たいきばんせい)

RUNNER's四字熟語 その10 2007年11月 アトミ通信92号掲載

小さな器と違って、大きく立派な器は容易に出来上がるものではない。
優れた素質は、必ずしも早くから発現するものではなく、時に凡々と見えても、人に遅れて光彩を放つようになる。
器の大きい人は早くから頭角を現すことはないが、人に遅れて大成するものであるとの譬え。

さて、ランナーのあなた、
実業団で競技ランナーとして活躍しているような選手は別として、「大器晩成」は市民ランナーの我々のためにあるような四字熟語です。 マラソンへの適応性は一朝一夕に獲得されるものではありません。 ちょっと人より足が速いと言うだけのランナーでは小器に終わってしまいます。 目立つようなタイムは出していなくても、コツコツ走り込んで息長い練習をしている人の中に、ランナーとしての大器は潜んでいるのではないでしょうか。
とかく世間では早成と勝敗と記録ばかりがもて囃されがちですが、市民ランナーの目指すところは他にあるように思われます。 東京マラソン効果で去年から皇居周りなどを多くのジョガーが走るようになりました。 底辺の拡大は喜ばしいことですが、崩れたフォームのまま速く走っている人を見かけると、いつまで続けられるのかと心配になります。
ランナーとしての身体が備わる前に、なまじスピードに頼って走っていると、故障に結び付き、怪我に悩まされ、思うような走りが出来ない日がやってきます。
 マラソンランナーとしての身体が出来上がるまでには、数年単位の時間がかかります。 筋や腱の強さと柔軟性、毛細血管の発達、速筋遅筋のバランス、高い心肺能力、最大酸素摂取量の増進、筋持久力・スピード持久力の養成などは、 走ることでやっと身に付いてくるものです。 総合的な走力を獲得するために、継続的練習を侮ることは出来ません。
 マラソンは毎日の積み重ねが生きるスポーツです。 ランナーであれば、意識して走りのレディネスを整える必要があります。 マラソンを走るための心身の準備が整っているかどうか、マラソンを走り抜く適合と成熟の状態はどうかなど、 自らの一挙手一投足を分析し意識しつつ走ることで走力の伸長も練習の効果も異なってきます。 一定のペースで押して行かれるようになるには体幹がしっかりしていなければなりません。 腹筋の力は、腿上げに結び付き、胃の働きに関わっています。 それもこれも意識して捉えられるようにしていきましょう。 昨日の自分の走りと比べて今日はどうなのか、明日の走りを考えて今日の練習を位置づけているかどうかが肝要です。 大器としての晩成を信じて共に走りましょう。

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他山之石(たざんのいし)

RUNNER's四字熟語 その2 2006年7月 アトミ通信84号掲載

よその山のつまらない石であっても、それを磨き砂や砥石として用いれば、自分の玉(才能・能力)を研くのに役立つものだ。
関わりのない人や、劣った人の言行でも、自分の知識・資質・人格を高めるために役立てることができる。
人の誤った言動も、自分の修養の助けにできる。

さて、ランナーのあなた、「たま」はあなた自身の「走る力」です。

 あなた自身をどう磨くか、あなた自身の走力をいかに磨いて伸ばすかが日々の課題ですね。 自分1人で走っていても容易に効果に結び付かない経験を誰しもがお持ちのことと思います。 そんな時、アトミの練習会に参加して皆と一緒に走っていると、 お互いに刺激を与え合って、普段ではとても出来ないような良い練習が出来ていた経験をお持ちでしょう。 アトミには自分より速いランナーも、遅いランナーもいるでしょうが、その日の自分の練習に合ったグループが必ず有り、 そのグループに乗って走ることで期待以上の練習が出来ます。 成果も上がります。
 この時、共に走るランナーたちは正に自らの走力を磨く「他山の石」であり、自らも亦、他のランナーの磨き砂の役割を果たしているのです。 関わりのない人や自分より劣った人の言行でさえも自分を磨く「他山の石」とすることが出来るのですから、 自分と同レベルの人たちとの競い合いはなおさら有益な「他山の石」となり得ているはずです。 アトミクラブの存在意義は、走る仲間同士で相乗効果を上げていく環境にあると言って良いでしょう。 あなたが求める「他山の石」ランナーは、織田に集まってきています。

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朝令暮改(ちょうれいぼかい)

RUNNER's四字熟語 その13 2008年5月 アトミ通信95号掲載

政令や方針、指示・命令が一定でないこと、一貫性に欠けること。
決意・決心・決定がころころ変わって、全く当てにならないこと。
頻繁な法則改変や急な政変など、決意決定のむやみな変更を揶揄・嘲笑する語。

 さて、ランナーのあなた、  朝、家を出るときは「今日は走るぞ」と心に決めながら、アフター5になると様々な理由が付いて、 仕事を言い訳のお付き合いに予定変更なんてことはありませんか。 個人レベルの朝令暮改は誰しも身に覚えのあることでしょう。
4月の木曜日は3日以外全て雨にたたられました。 10日などは冷たい雨が降りしきり、織田フィールドは貸切扱いから一般開放に切り替わりました。 インコースは水浸しでした。こんな日でも、午後7時には物好きたちが集まってきました。
通常、アトミは雨でも練習アリです。予定の1500m×5はとても無理、10000mのビルドアップ走にメニュー変更しました。 例の2000m毎に10秒上げていく練習です。 変更と言っても、これなら朝令暮改の範疇には入りません。
冷雨を突いて走ったアトミメンバー30名。その中には宇佐美先生の姿も。 「変人の集まり」と言いつつ一緒に走っていました。「腕を振れ!」と檄を飛ばしていました。
アフターで、慰労とも本音ともつかない先生の言葉は、 「電車は雨でも動くのだから、今日織田に来て走っているかどうかが大切なんですよ」。
多くの朝令暮改メンバーにとっては、耳の痛いことでした。17日も雨でしたが、参加者が増えていました。
朝、こうした方が良いよと教えられたランニングフォームを、 その日の夕方にはもう改善して身に付けているようなら、理想的ですね。 「朝令暮改」の原義には合いませんが。 腕振り一つとっても、意識すると走りが違ってきます。 人の身体は良くできています。 腕振りの際、手首の角度まで意識していますか? 意識的な切り替えはしていますか?  手首がきつく内側に折れていたのでは肘を後ろに振れません。 手首は、肘・腕から拳までまっすぐです。普通、軽く握った拳は、手の甲が垂直に外に向いて振れているはずですが、手首の角度を変えてみるとどうでしょう。 手の甲を下にすると、脇は締まりますが振りづらくなります。 手の甲を上にすると、脇が空いて振りは大きくなりますが上体がロールしがちです。
手の甲を垂直から45°内転させれば、手の甲が上の時より上体のロールが縮小されます。 どの程度が効果的か、走りやすいか、個人差はありますが、自分で試して使い分けてみたらいかがでしょう。

・手の甲が垂直外向き…
 多くのトラックランナーがコレ。綺麗なランニングフォーム。
・手の甲が45°内転…
 垂直からの切り替えなら、これだけでアクセルを踏んだ効果。
・手の甲が上…
 身体が小さい女性に多い工夫。山道や上り坂のスピード調整等に有効。
・手の甲が下…
 脇は締まっても、走りづらい。ランには不向き。拳法の引き手の構え。
・手首が内折れ…
 走り始めたばかりの女性ジョガーにありがちです。改善が必要です。

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百花繚乱(ひゃっかりょうらん)

RUNNER's四字熟語 その26 2010年7月 アトミ通信108号掲載

種々様々多くの花が一斉に咲きそろう様。
さまざまな花が一時に咲き乱れる様子。
優れた才能や人材が一時にたくさん現れ出ること。
?剌とした美女集団を賞める標語としても使われます。

 さて、ランナーのあなた、 織田フィールドでA〜Dのほぼ6グループに分かれ、老若男女入り乱れて走るアトミクラブのメンバーたちは、正に百花繚乱です。 花は、咲く時期も期間も、大小・長短も、色彩・香りも、姿・形も様々です。 人によって好悪も分かれます。
TTや駅伝の際、5000mを14分前後のスピードで駆け抜けるAの仲間を見ると、脚の回転も筋肉の躍動も、見惚れるほどです。 高いレベルの仲間同士が速さを競う姿は、見る者に感動を与えます。 こういう仲間が一緒に練習していることに誇りさえ覚えます。
 Bで、男性に混じって負けずに走ろうとする女性ランナーの姿には、ストイックでひたむきな美しさがあります。 サブスリーで走る女性にとって、練習環境として自らの刺激となる場は決して多くはありません。 週一日の定期的な刺激が得られるのはアトミならではのことでしょう。
 3時間15分・10分切りを目指す女性ランナーや60歳前後の男性が一緒に走るCは、一定のペースでの練習を積み重ねるには絶好のグループです。 スタート前の予定スピードより1000mで10秒ほどは速くなる覚悟で皆さん走っているようです。 難点は、ペースメーカー任せになっていること。 目標達成には、自ら責任先頭を買って出るくらいの積極性が望まれます。
 流行のランスカ姿もこのグループに多いですね。 華麗に速く走って入賞狙いが可能なランナーたちです。 まつわりついて赤い糸よろしく乱れを夢想する無粋な輩は忌避されるだけです。
 Dの役割も、見逃すことはできません。一定ペースで安心して走っていられる点、調整にも役立つ点など、認識・自覚して加わることです。 このグループで速きを争ってペースを乱すことは禁物です。 アトミの中では遅いグループでも、市民ランナーとしては十分に速く、着実な走力を培っているのです。 侮ってはなりません。
 走るに至った経緯も、時期や経験も、腕の振りやストライドの長さも、距離の得手不得手も、 トラックorロードの好き好きも様々なメンバーたちですが、目的は一つ、一人ではできない練習を求めてアトミに集い、 爽快な汗を流しています。年齢を超え、 男女を問わず、お互いのランニングライフを尊重し合う、多士済々の走る仲間たちです。

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粉骨砕身(ふんこつさいしん)

RUNNER's四字熟語 その29 2011年1月 アトミ通信111号掲載

骨を粉にし、身体を砕くほどに、力の及ぶ限り努めること、腐心すること。
献身的に努力すること。
身(み)を粉(こ)にして働くこと。
力のある限り精一杯の努力をすること。
身の続く限り努力すること。
ものごとに労を惜しまず傾注すること。
粉骨摧身とも。

さて、ランナーのあなた、  社会人として自らの生計を立てながら忙中に時間を捻出してランニングを続ける人たち、 共通項は苦しみを求めていないことです。 骨身を惜しまず毎日のように練習を重ね、自らの限界に無心にチャレンジし続ける姿は、輝いています。 織田に週一回集まり、その日の自分に合ったグループに入ってひたすら走り続ける。 日々の走り込みで、もうこれ以上はとても無理と思ったペースにも、追って行かれるようになった歓喜、感激。 レースに出て、何度も弾かれた自己新を漸く達成した充実感、満足感。 仲間と共に走る時に感じる励まし合いと心の響き合い、連帯感。 走ることで仕事や対人関係のストレスも解消されます。 ランニングが果たす効果と爽快感。精神的疲労を走るストレスで相殺し、明日への意欲を生むバネとなっています。
でも、骨身を尽くしている時には気付かないことがあります。 力の限り努力して練習を積むランナーは、自分の限界を意識する視点が必要です。 限界を知らずに走り続けていれば、いつかは肉体的ストレスが蓄積され、骨身を削ることにもなりかねません。 半月板損傷、疲労骨折、関節炎、腰痛、腱断裂等々、実に骨身を削る事態が生じます。
肉体疲労により抵抗力が弱まった結果、免疫不全や感染症罹患に結びつく恐れもあります。 走りながらも身体の声を聴き、身体内からの悲鳴に敏感になることです。 骨にも身体にも、耐用限度があることを弁えることです。 根性の問題ではありません。 60歳、70歳になっても走り続けるためには、骨身を削ぎ骨を砕くほどには頑張らないことです。 骨身に応えるようになったら、休養を取ることが大事です。 身体を壊しては元も子もありません。 日々の努力が報われる程々を意識しましょう。 向上心が裏目に出て、再起不能を招いては困ります。
時にランを休む「忙中閑あり」に大きな意味があります。 先日のアトミクラブ忘年会では、幹事や司会、バンド演奏のメンバーたちが午前中から集合して、 分担や進行の打ち合わせを行い、歌や伴奏の練習に取り組んでいたそうです。 走る時間返上、昼食抜きで余興の練習に励み、準備万端の備えで年忘れの会を盛り上げていました。 一同感謝です。アトミクラブの芸達者たちの摧心が支える催しでした。心身が休まるひとときでした。
 練習のご褒美は、記録を出すこと、トロフィーを獲得することだけではありません。 骨身には休息のご褒美が不可欠です。

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唯我独尊(ゆいがどくそん)

RUNNER's四字熟語 その16  2008年11月 アトミ通信98号掲載

「天上天下唯我独尊」は、この世に生きる全てのものの苦悩や迷いを救うのが本願であるとの度脱(どだつ)宣言。
仏陀の使命感と決意の表明が本来の趣旨だろうが、自負・自尊の語として多分に言葉や字面が一人歩きしている現実がある。
自分のみが優れた存在であるとの「うぬぼれ」や「ひとりよがり」を揶揄するニュアンスで用いられることが多い。

 さて、ランナーのあなた、  東京マラソン効果でランナー人口が飛躍的に伸びています。
第3回は7.5倍もの応募があったそうです。
競技の裾野が広がるのは嬉しいことですが、87%が落選と思うと恨めしい気がします。
今年のあなたに当選の女神が頬笑みますよう、三拝。
織田の混雑にも拍車が掛かっています。
コース確認の基本さえ分からない人たちが来ています。
クラブによっては他のランナーを蹴散らして走る唯我独尊チームもあって、いつか事故が起こるのではないかと心配です。
アトミクラブも、人数が多いだけに固まりやすく、一般開放日などにはトラックを専有しないような注意が必要ですね。
 あなたはところで、自分は速いと思っていますか?自分は走る素質に恵まれていると思いますか?素質の有無と能力の有無は次元が違います。
素質だけで走って勝負できるのは年少時に限られます。
どんなに素質豊かでも、競技との出会いや努力の継続が無ければその能力が発揮されることはありません。
ランニングと出会って、努力して、走り込んで、漸くランナーとしての地力が培われ、能力として開花していくのです。
どんなに素質があっても、サブスリー達成には月間300km程度の練習が必要なことをランナーなら皆が知っています。
月に500kmを超す準備をする人もいます。
1000mや5000mを誰よりも速く走ったとしても、フルマラソンを走りきる保証はありません。
 ふだんの練習で5’00”/kmの人が3時間30分切りを、4’15”/kmの人が3時間切りを果たすのは難しいことです。
その目標を達成するためには、4’30”/kmや3’45”/kmでの練習が欠かせません。
「サブスリー」の宣言(=決意表明)に当たり、メンタル面では「唯我独尊」が有効です。
「自分にはできる!」と自負するくらいが丁度です。
備えがないと、いたずらな苦悩や迷いが発生します。
ランナーの場合、それを救うのは向上心と自尊心と、走破への自信あるのみです。
「唯我独尊」の語は、発想が内向きか外向きかで大きな懸隔が生じます。
内向きだと自己主張と自己顕示が強まります。
速さこそ一番とばかりに、遅きを軽んずる発想につながります。
外向きだと他者理解と他者配慮が進みます。
速きを認めつつ、遅きをも重んずる気持ちになります。
勝ち負けにこだわって敗者を軽視するより、共走の喜びを共有する方が心豊かにランニングが続けられるというものです。
 世間では、成功した人の評判ばかりが高く、成功しない人が悪いと言わんばかりの風潮が蔓延しています。
勝ち組⇔負け組という語が流行する背景となっています。
富める者も貧しきも、人の価値が問われるのは懸命に生きているか否かです。
 国際マラソンのテレビ中継で映し出されるのは常にトップ選手です。
後続の選手たちの国際レースに出られた誇りは映し出されません。
選手権でありスポンサーの思惑もあって致し方ないとはいえ、ランナーの端くれとしては後続を切り捨てることなく、懸命に走る姿に共鳴し共感を覚えたいものです。
市民マラソンの場合にはトップだけを賞讃するより、走ることを楽しむランナー全員にスポットが当たって良いように思われます。
少なくとも懸命にゴールを目指す最後の選手まで温かい声援を送りたいものです。
マラソンの魅力は、努力無しには完走できない点にあります。
年齢も走力もスピードも異なるランナー同士が互いに相手の走りを評価できるのは、タイム以外の基準に照らして見るからです。
相対的な速さより、その人の意欲・努力・継続などに価値を認めているからです。
自負は本来、練習と努力によって培われるものです。
自分の努力があるから人の努力が見えます。
自分の今を磨くことで人の真の魅力が見えてきます。
遅いから駄目、速さこそ命などという単一的尺度は「ひとりよがり」の押し付けを招き心を貧しくします。
ランニングを好み、楽しみ、仲間を増やしましょう。
 ランナーなら誰しも、昨日より速くなりたい、今日の走力を維持したいと、速さを求めて練習を重ねます。
しかし、速さを求めるということと、速さにのみ価値観を置くことは別物です。
速きを誇り遅きを侮るのではありません。
速きも遅きも、ランナーの価値が問われるのは懸命に走っているか否かです。
人との競争ではなく自分との勝負です。

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臨機応変(りんきおうへん)

RUNNER's四字熟語 その19  2009年5月 アトミ通信101号掲載

時や場所や場合に臨み、その変化に応じて適切な対策を講じ、対処し、手を施すこと。
臨機と応変により的確な対処をしていくこと。
状況によって適当に計らうこと。
局面によって適切に対処すること。

 さて、ランナーのあなた、
マラソンは、正に臨機応変の連続ですね。
暑さ寒さや、風や雨や、路面の硬軟や凸凹や、坂の上り下りや、並走するランナーとの間合いや、自分の足取りや息づかいなど、 身の回りすべての状況と変化に応じて自分の走りを作り上げていくのがマラソンです。 一人の競技者が長い時間ずっと自分と向き合い、細心の気配りをしながら、自らの限界を究めていく、 これほど臨機と応変が問われるスポーツも珍しいと思います。
5,000mのTTでも、3,000mからの1kmは心拍も上がり、呼吸も荒くなり、 脚が張り足の運びが辛くなって来ます。 メンタルで負けないだけの臨機応変の駆け引きが必要になります。 「前に出るのか後ろに付くのか競り合うのか」、「相手との勝負しか眼中にない」というランナー同士のせめぎ合いだけでなく、 最終的には自分の心の葛藤をどう処理するのか、萎えようとする自分の心をどう奮い立たせるのかの駆け引きです。
マラソンは、天分や素質、体力や感性、スピードだけで済むスポーツではありません。 速きも遅きも、長距離ランナーがお互いを認め合うことが出来るのは、マラソンは練習努力無しに完走出来ないことを知っているからです。
 一人ひとりが実行している限界に迫ろうとする努力が分かるからです。 速くなくても懸命に走り続けている人は大勢います。
 努力無しに自らの限界は超えられません。 自らが努力しているから人の努力も分かります。 今を磨こうとする者同士だから見えてくる魅力が、仲間を増やします。 自ら努力することで人の努力が見えるようになるなら、それは素晴らしいことです。
 ランナーなら速く走るに越したことはないのですが、 タイムありき・勝負ありきという自分の決めつけを他のランナーにまで押し付けるのは、情けなくも永続きしない発想です。 貧乏ながら誠実に懸命に生きている人々はいっぱいいます。 金持ちが良くて貧乏人は悪いなんて決めつけられるものではありません。 学校だって勉強ができない子がダメな子ではありません。 勉強ができたって悪い奴らはいっぱいいます。 人に勝つ喜びと、己に克つ悦び、どちらが幸いなのでしょう。 一歩一歩の運びも、日々の人間関係も臨機応変ですね。

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和気藹々(わきあいあい)

RUNNER's四字熟語 その23 2010年1月 アトミ通信105号掲載

なごやかな雰囲気に包まれ、その気分が漲っていること。
和やかな空気が充ち満ちているその場の様子。
なごやかさが溢れていること。
諍いが収まり穏やかな状態。

さて、ランナーのあなた、
競技志向が強い選手権のランナーはいざ知らず、市民ランナー一般には和気藹々とした共通項があります。
なぜだろうかと考えていて思い当たったのは、ふだん走っている時の意識です。
速くなりたいという強い願望はあるにしても、自分と向き合っている自覚の方が色濃いのではないでしょうか。
自分と向き合いながら、考え、感じ、走っている内に、つまずきや悩みがあってもリフレッシュされ、解決策が思い浮かんだり、昇華したりします。
闘争心が対戦相手に向かう競技との違いかもしれません。
言いたいことを我慢するのが「和」ではありません。
嫌なことを我慢させるのも「和」ではありません。
生活基盤は当然に個々別々ながら、ことランニングについては目的や目標を共有し、走力を伸ばしたい、走力を維持したい、走る環境を保持したい、一人で走るよりは効果的な練習をしたい、一人では質的に不可能な練習をしたい、と願う仲間の集まりがアトミクラブです。
全国OB・OG駅伝、東日本国際駅伝、奥むさし駅伝競走など、クラブの総力を結集して取り組む行事はありますが、強制ではありません。
縛りではなく自発的な意思を尊重し、参加の歓びを分かち合う気風が、永年の間に培われてきたアトミクラブの特長です。
和気藹々の雰囲気を大切にするための心得は、自らの趣味・嗜好・言動が、他の不快を誘い顰蹙(ヒンシュク)を買うなら、自らを抑制すること以外にありません。
それが基本中の基本です。
走る仲間に配慮し尊重し合うようでなければ、うち解けた和気藹々の仲間とはなり得ません。
アトミクラブは、多くの老若男女が参加する大きなクラブです。
それだけに、諍いや不快を持ち込まないように個々に自制が必要です。
親しき仲にも礼儀あり、ほどほどの距離感覚と節度が必須です。

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以和為貴(わをもってとうとしとなす)

RUNNER's四字熟語 その24 2010年3月 アトミ通信106号掲載

和を貴いと考える。
人の和を貴いことだと思う。
仲良くすることは貴いと思う。
和を保つことは貴重なことである。
仲直りすることは大切なことだ。
「以A為B(AをもってBとなす)」は、「AのことをBであると考える」の意。

さて、ランナーのあなた、
いつの時代でも、どんな社会でも、人が作る世の中で重要なことは人の「和」です。
個々に立場も生活も利害も異なる人々が構成する社会です。
一人ひとりに考えや事情や打算があります。一人ひとりの性格や感情もあります。
人が増えれば増えるほど、お互いの理解が必要とされます。社会でしか生きられない動物が人間です。
人の社会のことを「人間」と書いて「じんかん」と呼ぶのはとても示唆に富んだことですが、そこに争いや不快を持ち込まないように、相互理解を深め、個々にも自制をしていきたいものです。
 言いたいことを我慢するのが「和」ではありません。
嫌なことを我慢させるのも「和」ではありません。
相手を攻撃して我意を通すのでは不和を招くだけです。考えが及ばなければ混乱を招くだけです。
「和」を保つために、個としての心得は、自らの趣味・嗜好・言動が他の不快を誘い顰蹙(ひんしゅく)を買うなら、自ら気付いて抑制すること、これが基本中の基本です。
人と人との思いやりが、交わり、加わった結果として初めて「和」が生じます。
 ちょっと重い文になってしまいました。でも、市民ランナーのクラブとして大きくなったアトミクラブだからこそ、メンバーの一人ひとりが「以和為貴」を重く認識していく必要があるのです。

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