アトミクラブ
RUNNER's四字熟語 その50
悠々自適(ゆうゆうじてき)

 ちょっと、ややこしいですか?
「悠々」は遥かに限りないさま、悠遠、悠久。
ゆっくりと落ち着いているさま。
遠く遙かなさま、長く久しいさま。また、数の多いさま。
ゆったりと落ち着いたさまの意では、「優遊・優游」も同義。
「自適」は何物にも束縛されず心のままに楽しむさま。
何事にも縛られず心の赴くままにのびのびと楽しむさま。
「悠々自適(優遊自適・優游自適)」で、俗世を離れ、自分の欲するままに心静かに生活すること。
俗世間の煩わしさを超越して心の赴くままにゆったりと日を過ごすこと。
境遇に煩わされることなく心がゆったりと寛いでいること。
「優遊自得(ゆうゆうじとく)」も思いのままに楽しむ意で同義。

 さて、ランナーのあなた、
 「そんな悠長なこと言っていられない。」「現実社会で闘いの日々を送っている自分には無縁のことだ。」 ランナーに悠々自適を勧めたら、そう言われてしまいそうです。 確かに汲々たる馬車馬の生活からはほど遠いことかもしれません。 しかし、ランニングを続ける上で、悠々自適が内包する「余裕としなやかさ」は、仕事にも好影響を与えると考えます。 達成感と働きがいにも結びつく大事です。 ゆっくりラン、のんびりランの推奨ではないと断っておきます。
アトミクラブのメンバーは、プロのランナーではありません。 それぞれに生活の基盤となる職業に就いています。 ランニングとは別に生計の糧を得て暮らしています。 我々は、日常の業務を誠実にこなした上で、至福の走りを求めて集まってくる市民ランナーです。 社会的責任を果たしながらも、プライベートで走りを楽しむ仲間たちです。 ランニングは実は、試練を乗り越える力を養い、社会人としての生活に格好のスパイスになっているのですが、自覚していますか。
あなたは何物にも束縛されず、心のままに楽しく走っているのでしょうか。 思いのままに走る楽しみを実現していますか。 ゆっくりと落ち着いた気持ちでレースに臨んでいますか。 フルマラソンをしなやかに淡々と走り抜くために、「悠々自適」は市民ランナーの一つの境地のように思われます。
近ごろ人事労務用語として耳にすることが多くなった言葉にレジリエンス(resilience)があります。 復元力・回復力・弾力などと訳されます。 心理学の方では「困難な状況にも関わらずしなやかに適応して生きる力」を意味します。 柔軟性・楽観性・忍耐力・感情調整力などが鍵となると言われます。 ランニングと似ていませんか。
 社会生活をしていれば、超えがたい困難が立ちはだかることもあります。 窮地に立つこともあります。 当然、誰しもが深く悩み、言いようのない苦しみを味わいます。 一種の外傷性ストレスに打ち拉がれることになります。
 が、その人の岐路はそこに始まります。 ある人は、その体験から努力継続の大切さと耐え抜く力を学び取ります。 ある人は、絶望に押し拉がれた末、目標に向かって進むことを止めてしまいます。
 前者がレジリエンスを持つ人の、後者は自らの脆弱性(vulnerability)から容易に抜け出せない人の典型です。 前者なら正常な平衡状態を維持する能力を発揮し、諦めない道を選ぶことが出来ます。 外力による歪みを跳ね返す力を手にします。
 後者は孤立を深め、精神的に辛い状況に追い込まれていきます。 逆境に弱い人は、結果にのみ目を向けがちです。 目の前の失敗にめげて、心が折れてしまうのです。 負のシュミレーションに陥りがちです。 一人で頑張る力は限られているのですから、思いを共有する仲間がいる、愚痴を言う相手がいるということも克服の重要な要素となるのです。
 物事に独りで取り組んで一喜一憂する状況は、感情の起伏を大きくするばかりで、気持ちの制御には結びつきません。 逆境を克服できる力は、しなやかな前向きの考え、肯定的な未来志向から生まれてくるものです。 物事に動じるのではなく、現実を正面から受け止めた上で、「あせらない・あなどらない・あきらめない」姿勢を貫くことです。
 ランニングの呼吸法で、苦しくなったら息を吐ききるようにする心得と同じです。 苦しいからと息を吸い続けたら過呼吸に陥ってしまいます。
 今はできなくても、少しずつ改善すれば良い、少しずつ成長すれば良い、いつかできるようになる、 逆境を乗り越える日を信じて今を大切にしよう、といった考え方が事態の好転を招き、逆境克服力を生みます。 心の折れない自分を形成する意味で、 ランナーの「悠々自適」はレジリエンスを身につけることに繋がっていくと考えます。 生活の糧を得る仕事を持ちながら、余暇にランニングを続ける我々の日常が、実は心身の強靱さとしなやかさを培い育てるトレーニングになっています。
 障害に直面したとき、諦めたらそこで終わってしまいますが、 自らの体力・走力の限界に日々挑戦し続けている我々ランナーは、自らの限界を乗り越える試練を重ねています。 老若男女を問いません。限界を乗り越えた体験が「楽観性」の獲得に繋がります。 息を抜くことを覚えるのです。 状況の変化に柔軟に対応する習慣が、感情調整を可能にします。 逆境に直面しても、挫折から回復する弾力性を養います。 しなやかな強さは、自己の限界に挑戦するランニング生活を通じて、日々獲得されてきている力です。 ランニングも仕事も人生も、悠々自適との釣り合いがとれると良いですね。


世間の煩わしさから遁れて自分の思うままに暮らすさま。
境遇に左右されず心静かに 過ごすこと。
困難や逆境にもめげず翻弄されず心のまま強くしなやかに生きること。
Kang(1)記

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