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RUNNER's四字熟語 その5 以心伝心(いしんでんしん) |
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訓読すれば、「心を以て(もって)心を伝ふ(つたう)。」となる。
「以」は手段・方法を示すので、「〜で」と思えば良い。
もとは仏教用語。個と個の対話を重視する禅家(ぜんけ)では、
暖皮肉(生き身)と暖皮肉(生き身)とで交わされる文字言語以前の問答により真理に迫ろうとした。
師家(しけ)は自らが得た仏法の奥義を無言の問答により弟子に悟らせようとしたのである。
弟子の側からすれば、無言のうちに心で悟りを得ることになる。
もっとも、当事者以外には何を言っているのか分からないのが「禅問答」。
さて、ランナーのあなた、
駅伝は格別。「襷をつなぐのが責任」、「少しでも早く襷を」、「離されてなるものか」と懸命に走る気持ちが次の走者に伝わり、
チームとしての志気や成績に大きく関わってきます。まさに以心伝心が物言う、メンタルレースです。
06年の奥むさし駅伝で面白かったのがアトミ三つ巴チームの攻防です。
第4中継点で、1チームが先行した後、残る2チームの番号が相次いで呼ばれました。
しかし、コースに出たHさんとSさんの目に映るアトミのランシャツ・ランパンはただ一人。
中継に迫ったところでやっと、Iさんの背中に張り付くKさんの顔が見えました。
右と左の首の傾きで顔が覗くだけの伯仲走です。襷渡しは1秒差。
襷を受けて逃げるHさん、追うSさん。3区の気持ちがそのまま4区の二人に伝わって、追う
も必死、逃げるも必死。以心伝心のダブル・バトル・レース。
先行の1チームも含め4区・5区の走者6名の区間タイムの差は最大で13秒。
当然、アンカー勝負に縺れこみました。
駅伝の以心伝心の醍醐味ですね。走り終え、飯能に戻って顔を合わせるやいなや、
Hさんの挨拶は「Kさん、恨むからぁー」。
4人がお互いに精一杯の走りをしたことへの興奮・充実・満足・感激・祝福。
以心伝心には、単なる偶然ではない何かがあるようです。
見ず知らずであっても、マラソンの後半、並走するランナーと競争になって、抜きつ抜かれつしながらも、
頑張る相手と共感を覚えて走ったことはありませんか。
「負けませんよ」とか「ゴールまで一緒に」とか「頑張りましょう」とか、お互いに言葉は交わさなくても、
同じ気持ちでゴールを目指す。タイムも伴えば最高ですね。中には、同時ゴールのおまけまで付いて、
忘れられない出会いになったなんてこともあるのでは。
@ 言葉では表されない悟りや真理を師の心から弟子の心に伝えること。主に禅家で用いる。
A 無言のうちに互いに胸の内が通じ合うこと。口で説明しなくても自然に相手の心に心が通じること。言語・文字を用いず、心から心に伝えること。
⇒心で心に伝えること。
⇒心が互いに良く通じ合うこと。言葉を用いずに気持ちが通じること。
Kang(1)記
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