アトミクラブ
RUNNER's四字熟語 その48
小心翼々(しょうしんよくよく)

 ちょっと、ややこしいですか?
「小心」には相反するような二つの意味がある。
一つは、「気が小さくて臆病なこと(さま)」「怖じ気づき勇気がないこと」「肝が小さく度量の狭いこと」。
一つは、「慎み深く些細なことにまで気を配ること(さま)」「細かいことにも気配りして慎み深いこと(さま)」「ていねいに心を砕くこと(さま)」「気をつけて物事を行うこと(さま)」。 「細心」も同じ。
「翼々」は、物事の盛んなさま、多いさま、整って美しいさま。敬い慎むさま。
「翼」は、敬い慎む意や助け守る意を含む。また、ビクビクするさま。
「小心翼々」で、「小事・細事にまで気を配り、慎み深くするさま」「用心深く、恭しいさま」「小さな事にも目配りや気配りをして、慎重であるさま」が原義。
転じて、「気が小さくて常にビクビクしているさま」「気が小さく絶えず周囲を気に掛け何かにおびえるさま」。 「細心翼々」も同じ。使い分けは、賞賛なら原義、誹謗なら転意となる。

 さて、ランナーのあなた、
「豪放磊落」で「フルマラソンでは小心翼々と豪放磊落の両方の要素が必要なようです」と記しました。
 今回はその「小心翼々」です。 「気弱に常にビクビク」では、あまりにも自信が無く、完走が危ぶまれます。 マイナス思考に陥りかねませんから、やはり何ごとも前向きに捉えましょう。 フルマラソンを完走するには、練習の積み重ねが必須です。 たとえ素質があっても天分があっても、いきなり練習も積まずに走ったらDNF(途中棄権)必至のスポーツです。 練習不十分でも、体調不良でも、ペース不安定でも、DNFとなりかねない競技です。 それだけに、日頃の生活や健康管理や計画的練習に細心の気配りが欠かせません。 走り込みをする際にも、ただ淡々と走るのではなく、関節・筋肉の動き、脚の運び、腕振りから、呼吸、心肺のはたらき、姿勢、心理状態に至るまで気を配り、 状況に応じて謙虚に走りを変えていく慎重さが求められます。 独りよがりの走りとならないためには、他のランナーとの合同練習の機会も確保し、独りでもペース配分を崩さないように単独持久走も練習に組み込む必要があります。
1月26日の第33回大阪国際女子マラソンで、ラストランの赤羽有紀子が笑顔で走りきりました。 Gタイムは2:26:00ながら終盤まで先頭争いを演じながらの第2位、34歳のママさんランナーの面目躍如です。 大阪は、初マラソンで走り、その後ハDNFも優勝も経験した大会とのことです。 引退レースで「走りきった」実感を抱くまでに、どれほどの「小心翼々」の練習を積んだことでしょう。 意欲を削がれ、レース運びを誤り、競走に敗れ、選考に漏れ、競技者ゆえの様々な体験をどれほど乗り越えたことでしょう。 連覇を果たしたタチアナ・ガメラシュミルコ(30)は、終盤の強さが定評のランナーです。 昨年もラスト1qで福士加代子(31)を振り切りました。先行逃げ切り型でも集団ペース依存型でもありません。 今年も、ハーフで41秒も遅れていたのに、後半でペースを上げて35qでは先頭に並ぶという追い上げ型のランナーです。 ラスト勝負に強く自在にスピードの切り替えができる選手とのことで、トップに迫ってくる後半の力強さは圧巻でした。
 「こんなランナー、今の日本にはいないな」と思っていたところ、新星が現れました。 初マラソンで4位に入賞した前田彩里です。 30q以降の12.195qを、ガメラシュミルコの42分00秒よりも速く、41分55秒での快走です。 因みに、2位の赤羽は43分26秒を要しています。Gタイム2:26:46は学生新記録とのことですが、まだ22歳、今後が楽しみです。
このレース、折り返しで声をかけ合ったという母親の前田淳子(50)も、2:55:24で40位完走を果たしています。
父親も2:13:54の記録を持つ実業団ランナーだったとのこと、素質だけでなく環境と天分も備わっていそうです。 これからの練習次第ですが、ポジティブな「小心翼々」と「胆大心小」のレース運びを身に付けて欲しいものです。素質開花と天分発揮が待たれます。


誉めるなら、「細かいことにまで心配りしているね」「恭しく慎み深い姿だね」
の意。
けなすなら、「気が小さくて臆病だね」「度量が狭いね、何ビクビクしているの」の意。
Kang(1)記

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