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RUNNER's四字熟語 その45 隠忍自重(いんにんじちょう) |
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ちょっと、ややこしいですか?
「隠」は丘などの陰にかくすこと、見えぬように覆いかくすこと、まといかくすこと、内々にすること、秘密にすること。
「忍」は忍ぶこと、耐えること、こらえること、我慢すること。
「隠忍」の読みはインニン(時にオンニンとも)。インが漢音、オンは呉音。
紀元前の『史記』や『漢書』『後漢書』にも散見される熟語で、苦しみを外に表さずに堪え忍ぶこと。
辛さをこらえて面に出さないこと。我慢しにくいところをぐっとこらえ、怒ったり反撃したりしないこと。
「自重」は、自分の行動を慎み、軽はずみなことをしないこと。
軽々しい振る舞いを慎むこと。自らが自らを重んじて軽はずみをしないこと。
自らを大切に品性を保って、軽率な言動に及ばないこと。
自分の人格を自ら大切にして、いたずらに卑下しないこと。
「重」はチョウが漢音、ジュウは呉音。「自重」はジチョウで、自身で自分を重んずるの意。
機械や車両そのものの重さの意なら、ジジュウ。「隠忍自重」はインニンジチョウ。
苦しみをこらえて軽々しく振る舞わないこと。
耐えがたいことや苦しみをぐっとこらえて、軽挙妄動をしないこと。
さて、ランナーのあなた、
自己新を狙おうとするマラソン大会に出場して、隠忍自重を貫く走りが出来ますか。
その日、気力が充実していたり、体調が良かったりすると、ついつい気持ちの押さえが利かなくなるものです。
一流の競技ランナーが意図してライバルに揺さぶりをかける場合はいざ知らず、市民ランナーがマラソンで結果を出すには、スピードのアップダウンの繰り返しやオーバーペースは禁物です。
そのようなことは百も承知しているつもりなのに、実際はなかなか難しいものです。
マラソンはイーブンペースで貫く走りが理想です。マラソンは自分の力量を認識し、いかに体力・気力・走力を維持・温存できるかが勝負です。
練習で識った自分の走力とペースを忘れずに適切な速さを保ち、軽率にいたずらなスピードアップをしないことが原則です。
前の集団に追いついても、右に左に余分な動きをせず、道が空くのを少し待つくらいの冷静さが必要です。
日々の練習で、ペース感覚を磨くと共に、自らの逸る気持ちを抑えられる精神面での強さも養っておくことです。
いくら体が軽く調子が良くても、10000mやハーフを走る感覚で走り続けたら、30kmか35kmで腕が固まり、足が止まり、背筋が丸まり、ピッチを保てなくなります。
後はもう失速の一途をたどるだけです。いったんペースを崩すと、フルは立て直しが難しいのが現実です。
身と心がネガティブ連鎖を繰り返し、ダメージを深めます。
歩きたい誘惑に克てなくなります。
どんなに遅く感じても、ランはウオークに速さで勝るのですが、辛さを我慢できない精神状況に陥り歩いてしまいます。覚えはありませんか。
自己新達成のためには、理想の走りを片時も忘れずに、隠忍自重して走る覚悟を定めることです。
そこを欠く走りを続けると、「練習で培った力を凌ぐ結果は得られない」どころか「気負いの反動からワースト記録」という現実を突きつけられるのが落ちです。
隠忍自重は、メンタルで勝つための言葉と考えて善いでしょう。1
000mで10秒±の世界です。100mで1秒ペースダウンさせたら楽に走れます。
1秒アップさせたら途端に続かなくなります。自分の限界を狙うレースでは、そこを見分けて走ることが出来るか否かが、勝負の分かれ目になります。
他に勝つよりも己に克つことが先決です。
レースは気分を高揚させます。ハイに任せて1〜2秒も速く入ってしまうと、ハーフまでは何とかなっても、30km、35kmで塗炭の苦しみを味わうことになります。
DNFの情けない結果を招きます。
苦しさをじっとこらえて軽々しい言動に至らないこと。
耐えがたきに耐え、軽々しく振る舞わないこと。
自分を大切にして品位を保ち、軽率な行動を取らないこと。
⇒黙って我慢すること。出しゃばらず控えめにすること。じっと我慢すること。
Kang記
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