アトミクラブ
RUNNER's四字熟語 その44
杓子定規(しゃくしじょうぎ)

 ちょっと、ややこしいですか?
は音シャクで「ひしゃく」、音ヒョウで「ひしゃくの柄」の意。
杓子(シャクシ)は飯物や汁物をすくい取る器物。
子(シ)は物の名に添える接尾語。
現代は汁をすくう道具をお玉杓子(オタマジャクシ)飯を盛る道具を杓文字(シャモジ)と呼ぶ。
もともと杓文字は杓子と同義の女房詞。
浴衣・湯巻きを湯文字(ゆもじ)、寿司を鮓文字(すもじ)、頭髪を髪文字(かもじ)、鯉を鯉文字(こもじ)と呼んだのと同類の用語法。
名詞の第一音節に接尾語「もじ」がついたもの。
なお、北斗七星の柄に当たる第5・第6・第7星を「斗杓(トヒョウ)」「斗柄(トヘイ)」と呼ぶ。
  定規は定木とも書く。線を引くときに使ったり、物を裁つときに当てがう道具。
また、物事の基準・標準・規範となるもの。
杓子定規は、杓子の曲がった柄を定規に使うことから、正確さを欠く誤った基準でものを測ること。
はなから歪んだ基準を当てはめて、他を律しようとすること。
既決・既定の考えにこだわって応用の効かないこと。
形式にとらわれて融通が効かないこと。

 さて、ランナーのあなた、
 誰も、自分を杓子定規とは思わないのかもしれません。 多様性という言葉が流行ったりしていますが、 人というものは存外、自分の価値観が曲がっていても気付かず、 それに固執してしまうようです。  アトミクラブは設立30年目を迎えています。 クラブ会員に練習会参加者を合わせると500名を超えようとする大きなクラブに成長してきました。 アトミと競うライバルとして名だたる実績を残した走友会でも、設立20年を境としてその多くが衰退に向かった事実を、 皆さんも見てきたはずです。 新メンバーの入会が途絶えると、平均年齢が毎年1歳ずつ上昇することになります。 会員の高齢化が進み、活動が行き詰まりを見せるようになります。 加齢は、目指していた記録の向上やレースでの勝利を遠のかせていきます。
 その点、アトミクラブの盛況はどこに由来しているのでしょうか。 価値観をタイム一辺倒、勝負オンリーにしなかったことが挙げられます。 速いことを絶対視してしまう雰囲気は、有るとすればいかがなものかと思います。 老若男女それぞれに期するところが違います。 同一人でも、レース計画によっては練習の強弱が自ずと変化します。 年齢の推移によって、目標の設定や練習内容にも質的変化が現れてきます。 その全てを受け入れて活動を続けた年月が、今のアトミクラブを築いています。 杓子定規な運営方針に嵌まらなかったことが共有財産として生きてきているようです。
 成果主義を万能と考える社会があります。 今が勝負の潮時で今の判断しか認めない、今何をするのか、今何をしているのかを 全てとして、結果だけを問う考え方です。切り捨てたものには価値を認めない、不用と決めたら不要なものとして押し通すことになります。 不採択や不採用の中に光るものがあっても、決定に際しては数理的合理性のみが判断基準となります。 決定権者も、数字でしか判断できませんから、数値的に示せなければどんどん埋もれてしまいます。 切り捨てに帰結せざるを得ない組織的限界を思います。
 アトミクラブがこの成果主義を地でゆくようであったら、競技志向でスピード第一、勝負第一を追い求めるようであれば、長続きはしないでしょう。 記録を求める時期があってもいい、勝負に拘泥する時期があってもいい。 しかし、個々にいずれは限界が来ます。 いつかタイムを維持することが目的となり、いつか走力の減退を如何に防ぐかが目標となります。 健康に、長く走り続けることに価値観を持つことも大切なことです。 さもなければ暴言・妄言・不見識がまかり通るクラブに成り下がってしまいます。 アトミクラブのメンバーは、50歳を過ぎてなお、「フルマラソン1歳刻みランキング」で100傑に何人もが名を連ねています。 それぞれに、走歴・年齢・走力・練習場所・勤務形態・家庭環境・経済事情・健康状態など、様々な事情を抱えながら努力しています。 その姿に感動と共鳴を抱く仲間でありたいものです。 画一的な価値観に依らず、杓子定規に曲がっているかもしれない価値観を押しつけず、一人ひとりの努力を認め支え合いながら、自然に世代交代してゆかれるアトミクラブが最高です。


基準の不確かなものを定規とすること。正しくない定規を当てはめること。
⇒形式にとらわれて融通の効かないこと。
 一つの考えに拘泥してしまい思考に振れ幅がないこと。
Kang記

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