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RUNNER's四字熟語 その43
獅子奮迅(ししふんじん)

 ちょっと、ややこしいですか?
「獅子(シシ)」でも「獅(シ)」でも、獣中王(百獣の王)ライオンのこと。
「子」は接尾辞で「シ」と音読する。「児(こ)」の意はない。
古く『漢書』・『後漢書』には「師子(シシ)」とも。
絶滅危惧種もあると。
「獣」および「肉(宍)」に共有する訓として「しし」がある。
「宍」は「肉」の俗字。元来、「肉」は「骨肉」「肉体」の「にく」や「獣肉」の「切り取ったにく」を、「獣」は「けもの(けだもの)」そのものを意味する。
狩猟により食用とする動物(鳥獣)の肉としては、猪(ゐ)を「ゐのしし」、鹿(か)を「かのしし」などと特に区別して呼ぶ場合がある。
「食用とするにく」「物の厚み」「捺印の際のにく」などの意を「肉」に持たすのは日本風。
「獅子」はしばしば仏教の経典に登場し、「獅子奮迅」もその一例。
『法華経』涌出品に「諸仏師子奮迅」(師子 ママ)とある。
仏が人中王(万人の王)であることを獣中王(百獣の王)である獅子に譬えての用法で、仏には一切畏れるものが無いとしたもの。
『大般若経』五十二には「如獅子王自在奮迅(獅子王の自在に奮迅するがごとし)」とある。
「獅子奮迅」は、「獅子奮迅勢(ししふんじんのいきおい)」とも用いる。獅子が奮い起ち走り回るような、手の付けられないほどの勢いを言う。

 さて、ランナーのあなた、
獅子奮迅の走りというと、どのようなランを言うのでしょうか。 持久力を伴う長距離走では、瞬発力に拠らず自らの限界を自ら確かめながら完走することが常のように思われますが、 手のつけられないほどの走りというものが「確かに在る」と、先日のレースで感じました。
今年の長野マラソンは雪景色の大会となりました。 4月20日なのに降雪、スタート時の気温0.4℃。 春にしては過酷とも言える競技条件でした。ほとんどの選手がビニール袋を被るなど防寒対策をとっていました。 天候から推して、終盤まで集団で進み、ラスト勝負になるだろうと、誰しもが予測していたはずです。 ところが、ランシャツ・ランパンにアームウオーマーと帽子・手袋だけの川内優輝選手がハイペースで入り、2q付近でもう先頭、12q過ぎにはトップが2人に絞られて一騎打ち状態。 30qで相方が変わっても構わずにペースを刻み、40q手前の給水を仕掛け所として一気にスパート。 ロシアのソロコフを1分以上も突き放し、2時間14分27秒でゴール。 第15回を迎える大会史上で初の日本人優勝を果たしました。タイムだけ見て平凡と言うこと勿れです。
公務員ランナーの川内優輝にとって、レースに出ることが自分の練習だと言います。 レースこそ我がコーチと言います。年末の防府(12.16)での優勝に続き、 今年になっても、エジプト国際(1.18)、別府大分(2.3)、ソウル国際(3.17)を走っており、4大会で優勝が3回、第4位のソウルも2時間8分14秒という見事な結果を残しています。 その間には、ハーフや駅伝、30q、10マイルのレースも走っているのですから、脱帽と言うのみです。 正に獅子奮迅のレース出場であり、その活躍に手のつけられない勢いを感じます。 実業団からの誘いも意に介さない強さがあります。レースコンディションに応じた走り分けさえできているのですから、恐れ入ります。 飼い慣らしの従順さより、野生の奔放さを大切にしたいものです。
 宗茂・宗猛・瀬古利彦・中山竹通らの往年の名ランナーとは全く異質で孤高な市民ランナーの活躍です。 トラもヒョウもジャガーもカモシカもいる中で、川内優輝はシシなのかもしれません。 箱根の山登りなどで柏原竜二にもシシを感じましたが、さて今後マラソンの王者となる日本人は誰でしょうか。


獅子が奮い起ったように勢いが極めて盛んなこと。
烈しい勢いで奮闘すること。猛りはやり突撃すること。
転じて、人の勢いが盛んなこと。
はなはだ激しい勢いで物事に対処すること。
全身の力を振り絞って行動すること。活躍の様が猛烈なこと。
人の行動が群を抜いて速く勇ましいこと。身を奮起して走り回る勢い。

Kang記

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