アトミクラブ
RUNNER's四字熟語 その42
五里霧中(ごりむちゅう)

 ちょっと、ややこしいですか?
一里は歩数360歩の距離。
一歩(片足踏み出す長さ)を約70cmとすると、一里は252m。
五里はその5倍で1.26km。また、方五里の地域。
度量衡は国や時代によって異なるため一概には言えないが、中国古代の一里は日本の一里3.927kmよりかなり短い。
それでも、五里四方に発生する霧は結構な範囲となる。
五里霧中は、「五里霧の中」「五里に及ぶ霧の中」の構成。
「東夷伝」に「倭(わ)」の記述があることで有名な『後漢書』の「張楷伝」に、「五里霧」の語がある。
道術を好む張楷は五里霧(五里にわたる霧)を生ずる能力を持ち、裴優は三里霧を発生する力があったという。
共に後漢の人。道術とは道家の仙術で、無為自然の道を体得する者の業。
深い霧の中では方向を見失うことから、物事の手がかりや方向が全くつかめないこと。
人に方向感覚を失わせ、人を迷わすこと。何が何やら皆目見当が付かないこと。
どうして良いか判断が付かないこと。様子が分からずに途方に暮れること。
状況が分からないまま手探りで進むこと。
物事の事情が不明なため、どうしたら良いのか判らないこと。
迷って方角が分からないこと。意味も分からずに彷徨うこと。

 さて、ランナーのあなた、
走っていて霧に巻かれたことはありますか。 薄い霧の中なら幻想的な趣を楽しみながら走ることが出来ますが、濃霧の中だとそうはいきません。 凸凹に気付かなかったり石に躓いたり、道端に足を踏み外したり障碍にぶつかったりします。 動くことそのものが危険を招くことさえあります。
 別大マラソンが2月3日にありました。見応えのあるレース展開でした。 公務員ランナー川内優輝と昨年のロンドン五輪マラソンで6位入賞の中本健太郎との一騎打ちでした。 粘りの川内、余裕の中本のレースを制したのは苦しい表情の川内でした。
 ロンドンへの代表選考会2012東京マラソンで惨敗し、「応援してくださる方々の期待を裏切ったから」と頭を丸めてから約1年、 別人の走りで月桂冠を頭にしました。 自己新の2時間8分15秒を出しながら、ゴール後に倒れ込むこともなく、できあがりかけた定評を裏切る勝利でした。 五里霧中の状況もあったと思われますが、霧を晴らす力があったのでしょうか。
 ある意味、人生は霧の中を往くようなものです。 方向も定まらぬままに往きつ戻りつします。悩みを抱え苦しみを抱きつつ、充実と幸せを願い求めて生きてゆきます。 幸福への道筋は誰の目にも見えていません。 マラソンは日々の練習無しに完走はかなわぬ競技ですから、選手は万全の準備を整えてレースに臨みます。 日々の努力に裏打ちされた、ある程度の自信はあるかもしれません。 それでも、マラソンレースの最中に生ずる身体の変調、心身の状況、スピードの変化など、見通しがつかない事々を凌がなければ勝負はおろか完走も儘なりません。 気象条件も勝敗を大きく左右します。 レースがどこで動くか、自分はその動きに対応できるか、ゴールまで足と心がもつか、 併走するライバルと最後まで競り合えるか、確信も保証も無い中を走るのですから、まるで霧の中を往くようなものです。 人生がマラソンに譬えられるのも頷けます。
 相手の意表を突いて肝心なことをうやむやにしてしまうことを「ケムに巻く」と言ったりします。 巻かれた霧からしっかり抜け出すこと、霧を晴らすことは、人生でもマラソンでも容易なことではありません。


五里におよぶ深い霧の中にいる意。霧のただ中にいて周囲の状況が見えず、進路も定まらず判断もつかない様子。 転じて方向を失うこと。
現状が見えないため、どう 進むべきか見通しや方針が立たないこと。
心迷いにより考えが定まらないこと。

Kang記

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