アトミクラブ
RUNNER's四字熟語 その39
破顔一笑(はがんいっしょう)

 ちょっと、ややこしいですか?
「破」には、やぶる、やぶれる、引き裂く、裂ける等の意の他に、蕾などがほころびるの意がある。
「斉破蕾(斉しく蕾を破る)」で、花が一斉に咲くこと。
やり抜く意で、走破・踏破・読破。
「顔」は、かお・顔いろ・顔だち・顔かたち・相好。
「破顔」は、顔をほころばすこと。 顔を和らげ笑うこと。相好を崩して笑うこと。
また、果実が熟したり、蕾がほころんで花が開くことのたとえ。
「一」は自然数の1の意の他に、少し、僅か、ちょっと等の意。
「笑」は、わらう・にっこりする・ほほえむ。
「咲」にも通じ、花や果実が開くことのたとえにも。
「一笑(一咲)」で、にっこりと微笑むこと、僅かに笑うこと、ちょっとにこりとすること、ちょっとの笑い。ひと笑い。
語としての用例は日本では鎌倉時代以降に多く見られる。
一笑千金・一笑百媚(いっしょうひゃくび)・一笑一顰(いっしょういっぴん)・付一笑(いっしょうにふす)・買一笑(いっしょうをかう)なども然り。
『論語』に、「夫子莞爾而笑曰(ふうし かんじとして わらひて いはく)」とある。
「莞爾として笑ふ」も、にっこりと満足げに笑うこと。
仏教用語としては、「破顔微笑(はがんみしょう)」がある。

 さて、ランナーのあなた、
ロンドンオリンピックの生中継で、睡眠不足ぎみでしたか。
それでもアトミメンバーはコンスタントな練習を重ねていたことでしょう。
去年の2011世界陸上で、ウサイン・ボルトは100mでフライングを犯し、金メダルを逃しました。
今年に入っても、ジャマイカの代表選考レースで100mはヨハン・ブレークに敗れて2位となり、オリンピックでの連覇を危ぶむ声もありました。
「伝説になる」のは、口で言うほど生易しいことではなかったはずです。 終わってみれば、100m・200mだけでなく400mリレーでも、3種目での金メダル獲得となりました。
得意満面の喜びは、彼独特の斜め上方向を指さすポーズに表れていました。弾けるような笑いが見られました。
 破顔一笑で印象に残ったのは、一人は体操男子個人総合で金メダル獲得の内村航平。
日本人でこの種目の金メダリストは遠藤幸雄・加藤沢男・具志堅幸司に次いで4人目、28年ぶりの快挙とのことですが、五輪の魔物に苦しめられながら克った己の表情が、傲らぬ喜びを感じさせました。
具志堅幸司の「体操での苦手克服は薄い紙を一枚ずつ重ねていくようなもの」との解説が、さもあるべしと思わせました。
 次の一組は卓球で女子団体決勝に進出、五輪初の銀メダル獲得を果たした福原愛・石川佳純・平野早矢香の三人組。
表彰式での三人の笑顔は、お互いに力の全てを出し切って戦ったという深い感慨を感じさせるものでした。
個々には強烈な競争心も自負心も有った三人です。緊張のあまり不安に押しつぶされそうな気持ちにもなったことでしょう。
団体決勝で、中国にシングル2戦・ダブルス1戦をストレートで敗れたとはいえ、女子シングルの金メダリスト李暁霞から奪取した第2ゲームでの福原の健闘は見事でした。
福原も石川も平野も、アスリートとしての気迫と誇りを感じさせる三人でした。
 次の一人は男子マラソンで日本人最高の6位入賞を果たした中本健太郎。
日本代表としては2004アテネ五輪以来2大会ぶりの入賞と言うことですが、ケニア勢の駆け引きに惑わされず、自らのペースを守り抜き、終盤に追い上げられた成果でした。 ゴール直後、腕のストップウオッチを押した一瞬、チラと見せた笑顔が魅せました。
3月のびわ湖マラソンで、2:08:53の自己ベストを出しながらも日本人2位となり、日本代表枠3名にも辛うじて選ばれた経緯がありました。
持ち前の安定した走力をより確かなものとするために、クロスカントリー走を取り入れ足づくりに専念したとのことです。
練習を支えてくれた家族や仲間たちに応えられた歓び、自らの走りがオリンピックの場で発揮できた喜びを見た思いがします。
男子マラソンのサバイバルは3人に絞られ、ケニア勢は、アベル・キルイが銀メダル、ウイルソン・キプサングが銅メダルのゴールでした。 金メダルは、最後まで力を温存できたウガンダのスティーブン・キプロティクのものとなりました。タイムは2:08:01でした。爽やかなゴールでした。
 ロンドンでは、8月29日からパラリンピックが始まります。
アトミクラブの高橋勇市選手が走る男子マラソンは9月9日に行われます。
アテネ・北京・ロンドンと3大会連続しての日本代表です。
伴走の大崎栄さん・早田俊幸さんは言うに及ばず、支えてくれた周りの人たち皆に喜んでもらいたいという気持ちを忘れずに、その日のU1ベストを尽くし走破して欲しいものです。
男47歳、アテネでの金メダル以上の果実獲得を目指してください。
破顔一笑は、したり顔や得意顔・自慢顔とは全く違う表情です。
感謝をこめた晴れやかな笑顔に期待しています。


にっこり笑うこと。にっこりと微笑むさま。
満足や充実を感じてのにこやかな笑い。
⇒今まで誰も為し得なかったことやり遂げる意で用いる「破天荒」の「破(やぶる)」と同類の用語と誤認してなのか、最近は「破顔一笑」を「弾けるような笑い」のニュアンスで用いる傾向が生じているように感ずる。
思い過ごしだろうか。
Kang(1)記

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