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RUNNER's四字熟語 その35
一陽来復(いちようらいふく)

 ちょっと、ややこしいですか?
『易経(周易)』では、天地陰陽説に基づき、一陰一陽から万物が生ずると考えた。
奇数の爻(こう)の「陽」と偶数の爻の「陰」を3本ずつ組み合わせ、8組の符号「八卦(はっか・はっけ)」とし、その卦が天地万物の兆象を表すとした。
以前、「乾坤一擲」で触れたが、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の八卦を二つずつ組み合わせた六十四卦に、森羅万象の吉凶禍福が象徴されるとして、卦を読み解いてきた。
「一陽来復」は、それに基づく現象の一つ。
「陽」は易で言う陽の気(陽爻)。
「陽」が兆すことにより「陰」が隠れるとされる。
陰暦10月は、陽の無い月(「坤坤」で、陰爻のみ)に当たる。
陰暦11月の冬至を迎えて、漸く一陽が巡り来ると考えられた。
「一陽」は、冬至になること。
冬が去り春が来ること。
逆境の後に好運が向いてくること。
「来復」は、一度去ったものが再び元に復(かえ)って来ること。
巡り来る春を祝う言葉に「一陽の嘉節」があり、陽気の復るめでたい日とされている。
「一陽の春」と用いて、巡り来る春、新年、新春の意。
「一陽来復」は、「陰」が極まって「陽」に復ること。
転じて、冬が去り春が訪れること、新年になること、寒さが去って温かくなること、事物回復の 時を迎えること。
逆境・不遇など思わしくないことが続いた後、ようやく幸運が向いてくる意にも用いられる。

さて、ランナーのあなた、
明けましておめでとうございます。 新春をどのようにお迎えですか。
「謹賀新年」「恭賀新年」「新禧」などの他に、「一陽来復」と記された年賀状を受け取った方はおいででしょうか。

右の表は、新暦と旧暦の対照表です。
2011年の冬至は、12月22日でした。
旧暦(太陰暦)11月も末の末ですね。
陰が極まって漸く、陽が兆すことになります。
新暦では正月になっても、旧暦での春を迎えるまでの1箇月余が年間で最も寒い時季になります。
日ごと寒さがつのり、春を祝うには寒すぎます。
「新春」と言うのが躊躇されるような寒さです。
新暦(太陽暦)は元旦でも、旧暦ではまだ12月8日です。
走っていても、容易に温かくなりません。
鼻や耳が赤くなります。肌がカサカサになります。
足先・手先が凍えます。
靴紐を絞めすぎるとシモヤケになります。
手袋も汗をぬぐうと冷たくなり防寒の役目を果たさなくなります。
走らない人から見れば「何を好き好んで寒い時に走らなくても」となるのでしょうが、 ランナーにはこの時期の練習こそが不可欠です。
多くのマラソンレースがこの時期に集中します。
コタツで丸くなってはいられません。
トラック練習でも、ロードワークでも、走り始めの寒さを凌ぎさえすれば、年間で一番走りやすく、 力を蓄え成果が発揮される時機です。
動かさなければ冷える一方の身体も、ランニングをした後は、長く暖かさを保ちます。
喉越し美味く冷たいビールが堪能できます。
ランニングのご褒美です。
1月21日の大寒を経て、1月23日に旧暦の正月を迎えます。
新月のためこの夜は月が出ませんが、三寒四温と言われる頃になります。
昼に走ると日脚が延びたことを感じるはずです。
花の色も、冬の紅から春先の白や青や黄に移ろいを見せます。
路傍に、ナズナやハコベ、スミレ、タンポポを見つけます。
野辺の日だまりには、オオイヌノフグリの薄青い小花も見られるようになります。
少し春ある心地がするのはこの頃です。
その点、旧暦の方が季節を良く映しています。
兆す春を感じながらのランニングが楽しみです。

奈良・平安の貴族たちも、野に出て若菜を摘むことで春の到来を喜びました。その習慣が「ななくさ」の行事を生みました。


陰暦11月の冬至が過ぎて、再び温かさが兆すこと。
春の兆候が見られる時季を迎えること。
これから日脚が延びる季節になること。 新春を迎えること。
冬が去り春が巡り来ること。
不遇が転じて運が向いてくること。
機運好転の時を迎えること。

Kang(1)記

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