アトミクラブ
RUNNER's四字熟語 その30
則天去私(そくてんきょし)

 ちょっと、ややこしいですか?
「則天」は、「天に則る(のっとる)」で、天を範とすること、天意自然を手本とすること。
「去私」は、「私(わたくし)を去る」で、私心を捨てること、自我を取り去ること。
「天」の内容は、「自然」や「造化」であっも、「神」や「仏」であっても良い。
人が生きる上での規範となりうる理想的、絶対的存在が「天」となる。
「私」は、人間が持つ個としての「欠点」であり、「弱点」であり、「汚辱」や「欲望」でもある。
「則天去私」で、自我を払い私心を捨てて、自然に近づき委ねること。
50才を目前に生涯を終えた夏目漱石が最晩年に理想とした境地。
自分本位の小さき私を取り去って、大いなる自然の摂理に委ねて生きること。

 さて、ランナーのあなた、
東京マラソンで、市民ランナー川内優輝選手が一躍2時間8分37秒のタイムを叩き出しました。 有力な実業団選手を凌いで、8月の世界陸上の代表の座を獲得しました。 大学時代、学連選抜で箱根駅伝に二度の出場経験を持つなど、素質は有ったのでしょうが、フルタイムで学校事務に携わる公務員が出した結果です。 土曜日には駒沢公園で距離練習をしていたそうですから、アトミクラブにも、一緒に走ったり走姿を見たりしているメンバーがいるかもしれません。 まだ23歳ですから、地に足の付いた生活と練習を重ねて、松田千枝さん、谷川真理さんがそうであったように、市民ランナーの星として輝いてほしいものです。
ランナーであれば誰しも、自己記録が伸びて走る意欲溢れる時期を経験します。 練習十分で臨んでも、天候や調子によって思うような結果が付いてこない焦れったさを経験します。 体調が悪いながら自重して走る内に意外な好成績に恵まれることを経験します。 いずれは体力の衰えを覚え、若い頃とは違う年齢相応な走りの必要を経験します。 でも、走り続ける喜びだけは50代、60代、70代になっても持ち続けたいのが、ランナーの偽らざる気持ちです。
20代の人に、70代の幸せを想像するのは遠いことでしょうが、若人と共に汗を滴らせ走る白髪世代の歓びを織田フィールドでなら垣間見ることができます。 月間400qの練習距離と5000m18分のスピードがサブスリーの条件のように言われますが、走り方や考え方次第では、たとえ250q20分でのサブスリー挑戦も夢ではないように思います。 個人差、年齢差、性差があります。 最大酸素摂取量やエネルギー燃焼効率など身体能力の科学的分析も大切でしょうが、市民ランナーは働きつつ時間を捻出して走ります。 故障しない身体作りと、故障した場合の徹底休養など、焦らず続ける精神バランスと心の強さが不可欠のように感じます。 「明暗」を分けるのは、若き栄華とスピード信仰からの脱皮でしょうか。 「馬の速度」と「牛の持久」、難しいのは後者です。 自分にできる練習を重ねた上は、私心の平衡を図り、結果は自然に委ねたいものです。
50代半ばの女性ランナーJさんが東京マラソンで、3時間20分余りで完走しています。 スタート直後に、蛙が手足を伸ばした形で転倒、よく踏みつぶされなかったものですが、膝を擦りむきながらもイーブンペースで走りきりました。 実は彼女は、ここ2〜3年で両足の疲労骨折を体験しています。 全く走ることのできない月日がありました。 完走の背後に、どのような諦念と努力の時があったことか…、大好きなランニングに乾杯!。


大いなる自然を手本として、私心を捨て去ること。
⇒小さな自我を取り去って、天意を手本として生きようとすること。
⇒自らの救いがたい部分を拭い去って、大いなる天に自らを委ねること。

Kang(1)記

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