アトミクラブ
RUNNER's四字熟語 その20
四面楚歌(しめんそか)

 ちょっと、ややこしいですか?
 「四面」は四方八方、周り中。
「楚歌」は「楚」国の民が唱う歌。
周囲が敵対者ばかりで孤立無援のこととして通行しているが、実際は、元々味方であったはずの者達までもが敵方に回っていること。
ただし寝返りの概念とは異なり、時が味方しなくなった状況を言う。
出典は『史記』「項羽本紀」の故事。
楚の項羽が追い詰められ垓下(がいか)で漢の高祖劉邦に包囲された際、敵軍の中から祖国「楚」の歌が沸き起こるのを聞いて、わが楚の民は既に漢に降伏したのかと驚嘆したという。
項羽にとって楚は敵の国ではなく自らの祖国である。
楚王項羽として一世を風靡していた時期もあった。
劉邦が戦略として自軍に楚歌を唱わせたわけではない。

 さて、ランナーのあなた、
周りが敵であるか否かは別にして、競技者はひとたびレースが始まれば孤立無援になります。 自分の走力を頼る以外に術がないのがマラソンです。 練習仲間だった人たちと一緒に走っていても、一人ひとりのレースです。 置き去りにされたとしても、裏切られたわけではありません。 体調も含め自分の走力が伴わなかっただけのことです。 敵も味方もなく、我が身を晒してひたすらにゴールを目指す競技がマラソンです。
組織であれば、四面楚歌の発生は有り得ることです。 項羽の楚軍は連戦連勝の軍隊でした。 項羽の号令一下、寸分の狂いも許さぬまで統制を図った組織でした。 対照的に劉邦の漢軍は、勝ち目がないと逃げまくり、周囲に集まる者共を頼みとして何度も組織を立て直さざるをえませんでした。 強烈な個性が主導して結果を追い求める組織もあれば、強烈な個性を埋没させて戮力により結果を導く組織もあります。 強烈な個性が奏功する場合もありますが、その個に何かがあれば求心力は失われます。 時の移りはそのまま力の移りです。 個人の力を恃んで引っ張ろうとした愚かさが、楚の脆弱さを露呈させました。
アトミクラブはどうでしょうか。
創設25周年を経て、400名を越すメンバーがいて、日常的に毎週の活動を持ちながらも、大きなトラブルを抱えない組織は珍しいと思います。 勢力争いに明け暮れることのない稀有なクラブ組織です。 アトミクラブには、無意味な争いがありません。 無意味な強制もありません。 特定の個人によって作られた組織でないことがアトミクラブの強みとなっています。 強烈な個性と管理意識を嫌い、弁えのあるメンバーが組織を支える伝統がアトミクラブの特長になっているようです。 四面楚歌をかこつ心配のないクラブとして求心力を呼んでいるのです。 走りの刺激を求めて、老いも若きも集まって来ます。
 市民ランナーは、他者に管理されてまで走りを強制されたいとは思っていません。 「マラソンランナーには、粘りと計画性と自己管理がある」とは監督の言葉です。 織田に集うメンバーがお互いの人格を尊重しあう限り、ことさらに組織管理を云々することはないのでしょう。 自主性を認め合う組織として、皆が気持ちよく走る環境を整えるだけです。


味方だった者がいつの間にか敵方に回ってしまっていること。
⇒敵の中に孤立して助けのないこと。助けがなく孤立すること。
⇒周り中が反対者・敵対者ばかりで、味方がいないこと。

Kang(1)記

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