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RUNNER's四字熟語 その11
深謀遠慮(しんぼうえんりょ)

 ちょっと、ややこしいですか?
紀元前から、兵法における行軍や用兵について用いられていた熟語です。 「深謀+遠慮」として直訳すれば、深いはかりごとと遠い先々までの考え。 深くしっかり考えることと遠い将来までを見通すこと。 また、「互文」法の熟語として見れば、「深遠」で奥深く遠いこと、内容が深く容易に計り知られないところ。 「謀慮」で謀り考えること、はかりごと。 「深遠+謀慮」で深く遠い将来までを見越してよく謀り考えること。またその考え。
修辞法としての「互文」法はあまり知られていない用法ですが、
「日進月歩(日に進歩し、月に進歩す)」
「天地長久(天も長久、地も長久)」
「雲散霧消(雲も消散し、霧も消散す)」
など、字数の制約の中でより豊かな含みを持たすための修辞で、四字熟語では数多く見られる技巧です。
「深謀遠慮」の場合は更に、「深慮」で十分に深く考えを巡らすこと、 「遠謀」で遠い先のことを見越したはかりごと、「深謀」で深くしっかり考えること、 「遠慮」で永い将来までを見通した深い考え(相手を思い遣って行動を控える意や、 依頼などを控えめに辞退する意は、日本的用法です)など、 漢字四文字をどの組み合わせで捉えても二字熟語が成立します。 それだけ相互に濃密な語義の関わり合いが感じられます。

 さて、ランナーのあなた、
走ることで培ってきたあなたの走力はどの程度の域にあるのでしょうか。 フルマラソンを走った翌日でも後遺症に悩まされないで済む「走る身体づくり」は出来ているでしょうか。 ひどい筋肉痛、関節痛、腰痛、腱の痛みなどの異常は、練習の不足・過多・内容や当日までの体調管理を含めて、 どこかに課題がありそうです。 走るための身体づくりや走力の向上・維持にも、深慮遠謀は欠かすことが出来ません。
 ランナーとしての身体が備わるには相当な時間がかかります。 自分の身体の状況と練習による走力のバランスを、あなたはどの程度に考え、折り合いを付けているでしょうか。
 若さに任せて、速く走りたい一心で、負荷ばかりを与える練習をしてはいませんか。 身体を労り休める心配りは十分でしょうか。 走る身体づくりへの配慮は万全でしょうか。 「毎日が合宿」のように追い込んだり、突っ込んだりしていては、身が持ちません。
 年配者はなおさらです。若いときから長距離走を続けてきたランナーは、 速かった頃のイメージがいつまでも残り、加齢による今の筋力や心肺機能の現実を冷静に見られないことがあるようです。 過去の栄光にしがみつくよりも、今走っていられることを喜びとする方が、考え方としては深いように思われます。 周囲も、過去のあなたは知りません。 努力して走り続けている今のあなたに共感を持ち、感銘を覚え、魅力を感じるはずです。
 ランニングは速いに越したことはありませんが、年齢なりの走りがあると考えます。 過去は過去でしかありません。 他の人があなたを讃えて昔の活躍を誉めてくれるなら有り難いことですが、自らの過去をひけらかしては見苦しいだけです。
 遅れてきたランナーはどうでしょう。 メタボリック症候群対策で走り始めた人は、それこそ遠い将来までを見通して、筋力の強化を謀りながら、 何年もかけて我慢強く身体を絞っていかなければなりません。 60歳、70歳を過ぎて走っていられるためには、年なりの練習を考え実行することです。 老獪なまでの深慮遠謀があっていいでしょう。
 考え落ちにさえならなければ、思慮は深遠であるほど価値があります。 ランナー各々の心の持ち方一つで、市民ランナーとしての日々がずいぶん違ってくるように思われます。


奥深く、たやすくは見えないところまで、しっかりとはかり考えること。
⇒深くしっかりした考えで、遠い将来までも見通すこと。またその考え。
⇒奥深く遠い先までを見越して考えた、しっかりしたはかりごと。

Kang(1)記

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